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「ただいま……」
「おかえりなさい。今日も大変そうね」
夜遅くに戻った彼は、すっかり疲れ切った顔だ。
ジョンは騎士団随伴の魔法士として働いており、街を外敵から守る戦いの毎日。今日も森でゴブリン狩りだった。
この様子では、かなり苦戦したに違いない。
一方、私の仕事は、街の中央施設で魔法の研究。夕方には帰宅できるので、こうして食事を用意して待つ日々だった。
「思ったより手強いゴブリンでね。何人も騎士が犠牲になったよ」
「まあ!」
「最近よくあるパターンだ。乱戦の最中いつのまにか姿が消えて、死体も出てこないってやつだ」
「あなたも気をつけてね。死体が出てこないなら、本当にモンスターに殺されたとは限らないし……」
「その点は大丈夫さ。近くにいる人間は仲間ばかり。厳しい審査を経て入団した騎士たちと、魔法学院を卒業した僕たちだけだからね」
危険思想の持ち主に魔法を与えたら大変なので、私たち魔法士は全員、人格適性検査を受けている。自白魔法を組み込んだ魔道具による検査であり、同じ魔道具が騎士団のテストでも使われているらしい。
だから、味方を討つような真似をする者はいないはずだが……。
「それより、お前も気をつけろよ。最近、街の中も物騒になってきたって話だ。身元不明の遺体が頻繁に発見されるって……」
「その話なら、研究塔でも噂になってるの。素性のわからぬ者ってことは、不法流入してきた移民よね。そういう連中の存在こそ物騒だわ」
形の上では、お互いの身を案じた会話。でも腹の中では違っており、疑念があるからこそ話題にしたのだろう、と私は気づいていた。
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