無害な殺人鬼 ――私と彼は似て非なるもの――

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    「変身魔法は、自分だけでなく他人も変えられます。ただし変えられるのは生物のみ。生物を無生物に変えることもできません。生物と無生物の隔たりは、神が定めた大きな違いなのです」  特殊魔法の講義で先生がそう言った時、私はバッと手を挙げていた。 「先生! 質問です!」 「死体は生物ですか? 無生物ですか?」  私の発言に続いて、教室の反対側から聞こえてきた声。  まさに私が質問しようと思った点であり、驚いてそちらへ視線をやれば、ジョンが挙手していた。  彼もこちらに目を向けている。  私がジョンを意識し始めた瞬間だった。 「命を与えるのも奪うのも、神の御業です。ひとたび命を奪われれば、もはや生物ではなく無生物となります」 「つまり死体は変身魔法の対象外ですね?」 「もちろんです」  先生に確認するジョンを見て、私は思った。きっと私と似たようなことを考えたのだろう、と。  彼に対して同族嫌悪が生まれても不思議ではなかったが、むしろ私は好感を抱いた。分かり合えるパートナーになれそう、と思ったのだ。  それは彼も同じだったらしい。  プロムと呼ばれる、魔法学院の卒業パーティー。男女ペアで出席する慣例であり、一人では行きづらいイベントだが……。  その卒業プロムで、ジョンが誘ってくれたのだ。  にんまりした笑顔で、私は快諾。これがきっかけで付き合い始めて、魔法学院を卒業後、私たちは一緒に暮らすようになっていた。    
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