半獣

プロローグ

　ネバダ州、ラス・ベガス。

　砂上の楼閣、砂漠の蜃気楼。
　退廃と背徳の夢の国。
　夜行性の獣が徘徊し、決して眠らない。
　勝つか負けるか、食うか食われるか・・・
　生き残れるか、それとも屍(しかばね)を晒(さら)すか・・・。

　そそり立つ摩天楼、エンパイアステートビルも、自由の女神も、凱旋門もまがい物。ここには、本物は何ひとつない。
　いや、それは違う。
　本物はある。だが、この街では本物であることに何の意味もないのだ。たとえそれが本物であっても、まがい物だらけのこの街で、果たして本物に見えるだろうか？
　たとえば・・・。

イラスト　たやすもとひさ