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クララじゃなくてフラグが立ってる
車を走らせて二時間、風景が都会からのどかな田園風景になり車や人の数も減ってきた。チラリと備え付けのナビを見ればそこは今通っている一本の道しか映っていない。
「マジかよ、この辺ナビ対応してねえし。どんだけ田舎なんだよ」
『そりゃあ地名入れたら北海道の端が表示されたくらいですからねえ。どこまで旅立つのかと思いましたよ』
今中嶋が車を走らせて向かっているのは依頼人の家だった。地名を調べたら電車が近くを通っていないほど田舎で、車で行くしかなかったのだがナビも対応できていないという辺境っぷりだ。同じ地名がたまたま北海道にあり、到着まで十九時間かかりますとナビが示したときは小杉が口元を押さえて静かに笑っていた。
普段ならこんな遠い場所への依頼は断っているのだが、今回は事情があって引き受けた。依頼人は以前佐藤に世話になり、佐藤探偵事務所を信用しているので是非お願いしたいと言って来たのだ。遠いし佐藤が不在だからと遠まわしに渋ると、破格の報酬額を用意してきた。そして今非常に事態が切迫している事と、家自体に問題があるのでどうしても来て貰いたいと言うのだ。何があるのか聞いても実際見てもらわないと説明しようがないと詳しくは教えて貰えない。
佐藤に連絡をしても返事がなく、その後依頼を受けて欲しいという電話が通算三十回を超えたあたりで中嶋が折れた。初期調査ということで様子見に来たのだ。
「俺の専門尾行と張り込みなんだけどな」
『まあまあ愚痴らない。いつも同じ圏内しか移動しないんだし、気分転換ですよ。帰りにサービスエリアでも寄って美味しいもの食べればいいじゃないですか』
何もない風景にも関わらずわくわくと外を見る一華はどこか楽しそうだ。それはそうだろう、一華は自分だけで移動できる範囲は少なく、どこかに行くには誰かにとりつかなければならないのだ。こういう遠出でもしない限り、成仏できない一華はずっとあの探偵事務所と周辺のみの移動範囲となっている。今回小杉が中嶋に行ってきてはどうかと言ったのも、どちらかというと一華を気遣っての事だったのだろう。
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