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『それで今回の依頼って本当に何も教えてくれなかったんですか?』
「いや、ざっくりとは聞いた。昔怪奇現象みたいのが起きて、そういうオカルトっぽいのを信じてないそこの息子が所長を呼んだそうだ。調べた結果怪奇現象っぽく見せて家から関係者を追い出そうとしたじいさんの仕業だったらしい」
『おじいさんなんでそんな手の込んだことを』
「ありがちありがち。遺産相続で揉め始めたから親族追い出そうとしたんだってよ。ただ金に群がる親族がウザかったのは息子も同じだったからじいさんとばあさんと息子だけの秘密にしたらしいけどな。所長は幽霊を見た! って騒いで協力したんだそうだ。だから今回この件は絶対しゃべらないでくれって。で、すっかり怪奇現象の起こる家と親族からびびられるようになったわけだが、今回何もしてないのにおかしな事が起きてるから誰の仕業か調べて欲しいそうだ」
とんでもない田舎なので小さな派出所が一つあるだけ、しかも人がいないからと定年退職したOBが勤務している程度らしい。一応その人に見てもらっても何もわからなかったので、探偵に頼むことにしたそうだ。
「今回はあくまで初期調査、あとはマジで所長にブン投げる予定だからさくっと帰るぞ」
『サトちゃん、そういう事言ってると帰れなくなったりするもんですよ。クローズドサークルの殺人現場で俺は部屋に戻るからな! 誰も入るなよ! って言って次の日死体で見つかる人みたいな感じで』
「嫌なこと言うなよ。ちょっと自分でも思ったから」
『そういうのは言葉にすると実現するもんです。幽霊仲間にならないよう気をつけて下さいよ。あ、ナビ消えちゃった』
一華の声にナビを再び見れば、「信号を受信できません」という表示が出ている。
北海道への案内が出た時点でナビは頼りにならないかもということで地図は見てきたし持ってきている。分かれ道はいくつかあるが、基本的にひたすら真っ直ぐ進めばいいだけなので間違えようがないからいいのだが。
『これも怪奇現象の一つだったりして』
「どうだろうな」
冗談で一華は言ったのだが中嶋の反応は予想に反してテンションの低いものだった。運転しているから集中しているだけかもしれないが、先ほどと違って笑顔がない。
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