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曰くつきの祠
親族が死んだ事よりご近所との関係優先なのか、とは思ったが口には出さない。遺産相続で揉めているというし、どう考えても仲良しではないだろう。それに田舎のコミュニティというのは都会と違い恐ろしいものがあるので、このまま放っておくわけにもいかないのはわからなくはない。
「それで? 何故この事を電話で話さず直接見に来て欲しいと言ったのですか」
「そっちは説明がめんどくさかったからで、これから見てもらいたい物が直接見ないと伝わらないものでして」
あっけらか~んと言う依頼人。そんなくだらない事のために片道二時間も、と内心愚痴るがこれも仕事だ、仕方がない。後で必要経費に高速代入れておこうと決め、清隆に見て欲しいものとやらを案内してもらうことにした。
廊下に出て清隆の後に続くと、正面から一華が戻ってきた。どうやら屋敷を一周したようだ。すぐに中嶋に憑依して報告をする。
(変わったものはない。凄く広い家なのに、この人たちしかいないみたい)
(そうか。これから見て欲しいものとやらのところに行く。ちょっとコイツの記憶探ってくれ)
ほのぼのとした雰囲気も相まって、いまいちこの御壬清隆という人物がよくわからない。困っているようには見えないし噓をついているようにも見えない。一言でいうなら超ド天然という感じだ。こういうタイプは話が通じず相手のペースに巻き込まれるので正直苦手だった。
先ほどの話がすべて本当なのか、噓なのか、隠し事があるのかわからない。とりあえず調べておかなくてはと思い一華に頼んだが、一華は清隆に近づいてすぐに戻ってきてしまった。
(なんか、この人に近づきたくない。何でだろ)
(波長が合わないのかもな。一応憑依にも相性があるから)
(そっかー。ごめんサトちゃん。この人は無理)
(まあ、しゃあないな)
一華がすまなそうに中嶋の肉体から出る。こういう事もあるだろうとは思っていたが今回はタイミングが悪い。地道に自分で調べるしかなさそうだ。
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