~Chapter 1~➀あまのじゃく

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そんな私の気持ちを陽平は知ってるのか知らないのかは定かではないけど、聡を目で追っている私は陽平とたまに目があってしまう。 その度に近寄ってきては、とびっきりの笑顔で私に話しかけてきた。 「ね!遊びに行っていい?お前んちに」 「はい?なんでよ!無理無理っ!」 いきなり距離を縮めてくる陽平に、驚きを隠せなかった。 「1回だけ!お願い」 手を合わせながら私に頭を下げる陽平を見ると少しだけ可愛いと思ってしまう。 本当に少しだけだけど…… そして、ずっと手を合わせて頭を下げたままの陽平を見ると、どうやら本気で私の家に来たいようだ。 「うち男の子を家にあげたら怒られる」 「えーー」 「お父さんめっちゃ怖いからね」 陽平は残念そうに舌打ちをし、口を尖らせた。 「じゃあさ.....一緒に帰ろ?」 「ん?なんで?」 どうしたら、そうなってしまうのか。 私は陽平ではなく、その隣にいる彼を見ているのに....。 陽平の近くで、他の男子とふざけ合ってる聡を横目で見ながら、目の前の陽平へと視線を戻す。 「話したいから」 「私と?」 陽平は少し恥ずかしそうにしていながらも小さく頷いた。 「私家の手伝いしなくちゃいけないから、早く帰らなきゃいけないの」 「ならさ、寝る前電話してもいい?」 陽平はクリクリの綺麗な目で見つめてきて、一瞬だけその瞳に吸い込まれそうになりながら、自分から目を反らした。 「いや、あのね私……実は……」 「なんだよ?」 「え、あ、うんと……陽平の友達のさ……」 なかなか伝えられずモジモジしてるうちに、周りの女子たちの視線が痛いほど突き刺さってくる。 そう、目の前にいる人物は、私が思っているより遥かに人気者だ。 このまま2人で話してる姿を見られたら、また変な噂が回ってしまう。 もちろん女子たちへの嫉妬が怖いのではなく、 聡に勘違いされたら嫌だという、ただその気持ちが大きくて「わかった!寝る前なら電話出れる」なんて、少し呆れながら答えれば 「じゃあ、9時に連絡するから出てね!!」と男子たちの集まっている輪の中に入っていった。 その後ろ姿を見ながら、小さくため息を吐き出せば、また聡の楽しそうに男子達とふざけている姿を見ては、すぐさま教室を飛び出した。
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