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「なーなー。肩もんで。」 床に座ったゲームを終えた彼がソファに座る私のもとに尻歩きで下がってきた。 「まってー、これ終わってから。」 携帯ゲームを切りのいいとこまでやり、テレビをバラエティにかえて肩をもみ始める。 「こってるっしょ。」 さっきまでゲームを2時間ほどしていた肩はそりゃぁ張っているに決まってる。 正直素人からしたら凝ってるかどうかなんてわからないがデスクワークの私よりは柔らかい。 「私のが凝ってる。このあと私のも揉んで」 「え、揉んだら寝るからやだ」 「寝てもいいじゃん。」 どうでもいい話をしながら肩をもみ、肩甲骨のツボとかいうものを携帯で調べて押して見る。 「あーそれなんか腕までいいかんじ。」 「そーだろー!」 ネットの知識にもかかわらず得意げに私は彼の肩をもみ続けた。 また、肩に戻り首の付け根を押しながら、だんだんと頭の方へと指圧する場所を上げていく。 「あ。そこは首!」 肩から明らかに付け根の首へと伸びる緩やかな坂を指圧すると彼は大きな声をだした。 「何急に」 「首は素人はしてはいけないと書いてました。なにかに。」 「まぁよく言うよね神経詰まってるからって。てかここは首?」 「首だろ。」 「ならここは?」 少し場所を下げ押す。しかしそこもなだらかな坂の部分だ。 「肩!」 「えー、ならさっきのとこも肩じゃん。」 「いんや、首。」 「なら押すからあんたの思う肩と首教えて」 私は肩の端から、徐々に上にと登らせながら指圧をつづけた。その動きに合わせ彼の言葉が出る。 「肩、肩、肩、肩、首いいい!!!」 「ははっ。さっきここ肩言ったじゃん。」 「えー、うそだ。なら、お前の思う肩はどこまで?」 私は彼の首を頭から下げるようになぞり方へと続くカーブのとこでゆびをおした。 「ここ」 「それは首だ。」 「嘘だー。」 私はポチポチと携帯で首の範囲を調べる。 丁寧に色分けされたイラストがあったためそれを彼に見せる。 「みてみて、このカーブは首だって」 「ウッソ。そこが一番痛いのに。」 「残念。明日マッサージ屋にでも行って。」 「まって、けどこのゆるいカーブは肩に入ってない?!」 「ならこのイラストの画面持ってて。」 彼に携帯をもたせ、私はそれを見ながら指圧する。 また肩の端から首に向かい指圧していく。イラストから取れる自分の思う肩までおし、また肩の先へと戻ろうとする。 「もう一声!!」 「や、もう一声したら首じゃない?」 「行ける気がする!」 「神経切れてもしらないよー」 「てかいつも首自分で押してるしな。」 あはは、と笑う彼にならなぜ先程止めたと思う気持ちが生まれ、私は頭をベシっと叩いた。 「自分で揉んどけ。」
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