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 男の眼の前に美しい湖の女神が現れた。  「貴方の落としたのは、この金の斧ですか。それともこちらの銀の斧ですか」  この問いは2度目。男は一度、金と銀の斧を貰い、裕福な暮らしをしていた。しかしどこか満たされなかった。問題なのは女神。あまりにも美しく、男は街に下りてからもずっと心を奪われていたのだ。  「俺が落としたのは心です。貴方を目にしてからずっと恋に落ちてしまった」  男は言った。街に下りてからずっと考えていたプロポーズの言葉。女神は顔を真っ赤にしている。  「そ、そうですか。どうやら嘘ではないようですね。正直者の貴方には私を授けなければならないようです」  男は小躍りした。その瞬間つるりと足を滑らせた。湖にぼちゃんと落ちる。  男は二度と浮かびあがることはなかった。
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