時間はあるが金が無い

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時間はあるが金が無い

 その男は金が無かった。  金は無いが時間はある。何か仕事を探せばいいのだが、男はねっからのぐうたらだった。  「楽して金が稼げないものか」  そんな事を考えていると、一つの看板が目に入った。看板には一言。  「時間扱ってます」  とだけ書かれていた。  男は看板をたどりに路地の奥へと入っていく。そこには店の主人が一人。  「いらっしゃい。ここでは時間を扱ってるよ。それで、今日は何がいりようかな」  「いや。金は持ってない」  「ならば、貴方の時間を私が買うと言うのどうかな」  どうやらこの店は買取も行ってるらしい。  時間なら余るほどある。男は時間を売る事にした。  「どのくらい売るんだい」  「そうだな。ありったけ売ろうと思う」  そういうと、店の主人は険しい表情になる。  「ありったけか。それはあまりお勧めしないよ。後悔しても元には戻れないんだよ」  「いや。良い。時間なら山ほどあるんだ」  「そうか。では買い取らせていただこう」  そういうと、辺りが真っ暗になる。男はその闇に飲まれ落ちていった。  男は目が覚めるとベットに居る事に気付いた。  「いったいここはどこだ」  「なんてことだ。目が覚めるなんて」  周りの人たちが驚いて男をみている。男は病室のベッドの上で寝ていたのだ。  「貴方は事故にあい30年ほど寝ていたんですよ」  医者らしき人物が男に言う。信じられない事が起こったもんだ。と男は思った。  同時に男は時間を売った事を思い出していた。  そうだ。金はどこだ。男が辺りを探すと、大きなバッグが机の上に有った。  中にはぎっちり札束がつまってるに違いない。男はそう思いバッグを開けた。  しかし、中は空っぽ何も入って無かった。  「ああ。そのバッグですか。貴方の治療費そこから払わせて貰いましたよ」  医者がとんでもない事を言った。男は絶望し窓を見つめた。  窓に映りこんでいたのは、すっかり老人となった男のシルエット──。
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