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Yellow and Orange
明るさを取り戻した世界を歩いていると、取り囲む樹々の種類が変わり、空気がひんやりとしてきた。そして視線と同じ高さの木にたくさんの果実が実っているのが見えた。
歩を進めるごとに、周囲を漂う柑橘の華やかで甘い香りが濃くなった。高い木の上にたくさんの柚子が実っていて、右を見ると葡萄の房のように実るグレープフルーツ、反対側にはもっと大きな晩白柚もなっていた。下の方に実をつけたレモンは小ぶりで可愛らしい。晴れやかな色をした柑橘は、太陽の光を受け止め真っ直ぐ跳ね返していた。
耳下腺がつんと痛くなり、口の中に唾液が溢れた。目の前にグレープフルーツがボールのような実をたわわに実らせているのを見て手を伸ばした。手にした実はしっかりと重い。抱えてその場にしゃがむと、大きすぎる実がいくつも地面に転がっていた。辺り一面の香りは、熟れて朽ちたものから広がっていた。
爪を立てて厚い皮を剥いていくと、鮮やかな香りが手元からも立ちのぼった。房に分けて薄皮を剥くと、たっぷりの汁が手を濡らした。口に入れると、甘い。その甘さは喉の渇きを誘い、立て続けにいくつかのグレープフルーツを食べた。さすがに身体が重くなりため息をつくと、息すら甘い。
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