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『嫌な予感』
「おっす!王真」
「おはよー義人」
青洲の呼び出しから一週間近く経過したが青洲とはあれから一度も話していない。
見ると青洲は今日も今日とて一人で携帯をいじっている。
「……なぁ」
「――ん?」
「なぁって話聞いてるか?」
「あ、悪りぃ、ボーッとして聞いてなかった」
「おいおい大丈夫かよこの糞暑い中ゴミ拾いしすぎて脳が溶けちまったんじゃねーの?」
「んな事ねぇって」
「ったく、今度ゴミ拾いする時は俺も誘えよな手伝い兼監視してやる、お前に休まれたら俺は飯の時間や体育のペアでボッチってしまうだろうが」
「ハハッ手伝いに来てくれるなら大歓迎だぜ、ところで何の話だっけ?」
「そうだ、そうだ、聞いたか王真?昨日もうちの学校の生徒が“オチコー”の奴らに暴行されたらしいぜ」
「またかよ」
“落谷ヶ丘高校”通称“オチコー”は区でも屈指の不良校であり、堕ちに堕ちた不良どもの終着点、どんな聖人でも入学すれば3日で極悪人に堕ちてしまう。等と噂されている。
「今週に入ってこれで四度目だっけ?」
「五度目だ被害者は八人、昨日は友達三人で遊んでいる時に襲われたらしい」
「全く物騒な話だぜ、それにしてもなんで最近になって暴行がこんな増え出したんだろうな?」
「なんでも最近“オチコー”の番長が交代したらしくそいつがかなりの無責任で配下の不良どもが好き勝手してるって話らしいぜ」
「新番長か、どんな奴なんだ?」
「俺もよくは知らねーんだけど、どうやら日狩とか言う一年らしい、――ったくせっかく明日は土曜日なのにおちおち遊びにも出れないぜ」
「まっ精々家で勉強してろって事だな」
「そーだな――ところで王真」
「ん?なんだ?」
「俺今日発売の漫画買いに行きたいんだわ、でも本屋って遠いじゃん、もしかしたら“オチコー”の奴らに俺も襲われるかもしれないじゃん、怖いじゃん、だからさぁ〜」
ものすごく遠回しに義人は頼み事をしてくるが義人のこんな風な性格や話し方を熟知している王真は快く承諾する。
「わーた、わーた、ついてってやるよ」
「わぁお、流石王真!我がクラス一の優男!」
「ふっ、それほどでも……あるかもな」
「はーい、ホームルーム始めるぞ、席つけ〜」
「お、先生きたな、じゃ、今日放課後予定入れんなよ」
「了解っす!」
義人は指でグッドサインを作ると自分の席に帰って行った。
放課後になり王真と義人は本屋へ向かい、各々の買い物を済ませると店を後にした。
「いや〜マジサンキューな王真、お陰で欲しい漫画が買えたぜ」
「そりゃ、ようござんしたね」
「これからどうする?ワクドでも寄って帰るか?――水なら奢るぜ」
「うーん、いや、あんま遅くなると危ねぇし、今日のところはまっすぐ帰ろうぜ」
「それもそうだな、でも本当にワクド寄らなくて良いのか?水なら奢るって言ってんのに」
「わざと無視したギャグ繰り返し使ってくるんじゃねーよ」
「えぇ〜!気づいてたんならツッコミいれてよ、水は無料やろうがー!!って」
「くだらなすぎてツッコむつもりにもなれなかったんだよ」
「王真くん酷ぉ〜い」
「ハハッ」
それから王真と義人は今日買った漫画についてや、最近のアニメについて語りながら帰っていたが、途中であるものが王真の目の端に写った。
「――悪い義人用事思い出したから先に帰ってくれるか?」
「ん?どうした、買い物なら付き合うけど?」
「いや大丈夫、チャチャッと行ってチャチャッと済ますから」
「でも今一人でいるのは危なくねーか?別に俺帰っても暇だしちょっとくらい時間がかかっても大丈夫だぞ?」
「いや、本当大した事じゃねーし、直ぐに終わるから大丈夫だ」
「――そうか?じゃ気をつけていけよ」
「あぁ、じゃあまた月曜日」
「おう」
義人と別ると来た道を走って引き返す。先程王真の目に写ったもの、それは“オチコー”の制服を着た三人の男と一緒に歩いている青洲だった……
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