『堕ちた生徒達』

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『堕ちた生徒達』

 「ーー話が違うじゃないですか!」  大きな桜の木が一本生えているだけでなんの遊具も設置されていない無駄な広さをした公園に青洲の声が響く。  「あぁん?何のことだ?」  青洲の目の前にいる“オチコー”の生徒達の一人はわざとらしく聞き返した。他の二人もニヤニヤと笑みを浮かべている。  「決まってるじゃ無いですか!私は暴力を振るって、なんて言ってません、ちょっと脅かしてくださいと頼んだんです。それに対象人物も違うじゃ無いですか!」  「んだよ、働かなくて怒られるならともかく働きすぎで怒られるなんて思いもしなかったぜ」  ――しまった。完全に協力を仰ぐ相手を間違えた。  青洲は後悔したが後の祭りだった……  当初の目的ならこの男達に少し王真を脅かしてもらい怒った王真が魔王時代の力で男達を退けさせ、それを機にあっちの世界の事を思い出してもらう、それだけのことだった。本当なら誰一人傷つくことは無い作戦のはずだったのだ。  「――ともかく、約束のお金は渡せません」  人類を滅ぼしましょう、等と言っていた青洲だったが、目の前の男達により無関係の生徒達が犠牲になった事に胸を痛めていたが、その胸の痛みが何なのかよく理解できずにいた。  ただ目の前の男達に対して怒りが込み上げる。  「あ!?テメェなめてんのか!?」  「当たり前です。先に勝手な行動をしたのはそっちです。そんな方々に私の大切なお小遣い(軍資金)は渡せません!」  「……あっそ、じゃあいいや――そーいや俺たちあんたの身体にかなり興味があったんだよね」  「え?」  ゾクリッと言う感覚が青洲を襲う。男達は皆歪な笑みを浮かべ近寄ってくる。  「――うっあぁ……」  逃げ出そうとしたがすぐに両腕を二人にそれぞれ掴まれ、華奢な体つきの青洲にそれを振り解くことなどできるわけもなかった。  「あんた、顔も良いよな、知的っつーの?うちの学校にゃいねぇタイプだ――心配すんな痛くはしねぇよ、俺たちこれでも女の子にゃあ優しいからよ」  「どうする?とりま近くの多目的トイレにでも連れてくか?意外にそっちの方が興奮するんだよな」  「う……あっあ、うぅ、ハッハァッ」  助けを呼ぼうとしても恐怖で上手く声が出せず、呼吸すらまともに出来ない。目からは涙が溢れてくる。  「……んな、さい」  ポツリと口から漏れた。  「んだ?なんつった?」  「ごめん…なさい……ごめんなさい」  溢れる涙は止まらず、息も絶え絶えに呟くように言葉が喉から出る。その様子を見て男達は再び笑い出し、  「――しゃあねぇな、許してやるよ」  暫し笑った後一人が言った。  「本当……ですか!?」  「うーそでーす」  一瞬だけ明るくなった青洲の表情が直ぐに絶望の物へと変わる。男達はその様子で三度笑い始める。  ――やはり人類は滅びるべきなんだ……  何もできない悔しさと屈辱でまみれた青洲は目の前の男達を見て再度そう考える。  そして決意を新たにした青洲は自身の右腕を掴んでいる男の手を涙目で睨みつけると思い切り噛みついた。  「痛ってぇ!!何しやがる!この!」  「うぁっ……うぅ……」  噛みつかれた男は青洲の腕から手を離すと、青洲の頬をはたく。  「調子に乗りすぎだな、あ〜もうめんどくせえし、ここでヤッちまうか?」  「おお、そりゃ良いな動画とか撮って拡散してやろうぜ」  「いいね、いいね!」  「――うう、っあぁ」  青洲はなんとか逃げようと左腕を掴んでいる手も噛みつこうとしたが、男は腕を掴んだまま手を後ろに引き、青洲は転倒してしまった。  「よいしょっと、騒ぐなよ」  仰向けに倒れた倒れた青洲の腰あたりに1人の男が馬乗りになり、強引に制服の上着を脱がした。青洲の控えめな胸を包む薄い青色の下着が露わになる。  「いいねぇこういうブラ、清純派っていうの?マジで知り合いにいねぇタイプだわ、おい、カメラ回しとけよ」  ――結局私は何も変われなかった。  生まれ変わる前も後もただ奪われ続けるだけの存在、勇者の様に仲間もいなければ、魔王様の様な力すらない、ただ奪われるだけ、ただ失うだけの一生……  そんな私が人類を滅ぼすなんて大それた事を言うなんてただの笑い草だったんだ。きっと魔王様も呆れている事だろう。いや魔王様も私の事なんて気にもとめていないだろう。  諦めの表情をし涙を流すだけの青洲の胸元に男の手が伸びてくる。  「――やめろ!!」  突如公園に怒鳴り声が聞こえてきた。青洲は首だけ動かし声の主を見ると、  「魔王……さまぁ………助けて………ください」  震える声で必死に助けを求めた。
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