エピローグ 『これから』

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エピローグ 『これから』

 「――ったく、たった一日でこんなになるもんかねぇ?」    王真は勇者と遭遇した次の日であった土曜日を一日寝て過ごし、日曜日に公園へ行くと桜の花びらはすでに散っており、桜の木の周辺は食べ終わった弁当等の容器や空き缶などが多数捨てられていた。  「一応軍手とゴミ袋持ってきといてよかったな――しっかしそれにしてもすっげぇゴミの量だな、こりゃ相当時間かかるぞ」  ぶつくさと文句をいいつつ軍手をはめていると  「――それ私の分もありますか?」    ふいに背後からそう声をかけられ振り返る。  「あれ?青洲さん?どうしたの?」  「どうしてって、手伝いに来たんですよ――こんな汚い公園を一人で綺麗にしようとしたらかなりの時間が掛かっちゃいますって」  「そっか、ありがとう」  「たった一回手伝うくらいで毎日やっている人にお礼言われる権利なんてありませんよ、それに人を助けたら困っている時に助け返してもらえるっていうのが絆って魔王様言っていたじゃないですか――私、魔王様と絆を紡ぎたいです!」  青洲は若干頬を赤く染めながらそう言ったが、王真は夏の暑さのせいかな、と、特に気にせず  「そうか――よっしゃーじゃあ頼むぜ青洲さん」  と予備の軍手を取り出すと青洲へ手渡した。  その際王真は青洲の  「はぁっ」  という小さなため息を聞き逃していた。  「――あっそうだ魔王様」  二人で作業を始めてから数十分、それまで特に話さず黙々と作業をしていた青洲の口が開く。  「ん?なんだ?」  「一応言っておきますが、私、人類を滅ぼそうなんて考えはもう消しましたからね」  「へぇ、どうして突然そんな心変わりを?」  「一昨日の一件で良くも悪くも気付いてしまったんです。私が本当嫌ってに(こわ)したかったのは変わらない自分自身なんだって――まぁ、中にはあの三人組みたいに本当に嫌いな人達も、ちらほらいますけど」  「ハハッたしかにそうだな――ここだけの話俺にだって何人かいるんだぜ? そう言う人」  「へぇ意外です――一応聞いときますけどその人達に死んで欲しいなんて思ってませんよね?」    「当たり前だろ」  「私もです!――私はそう言う人達に変わってもらいたいんです。だから魔王様――この世界を征服しましょうよ!」  「えぇ!? 征服ぅ!?」  「――もちろん勇者さんの言っていた様に力による恐怖での支配なんかじゃなくて魔王様の優しさによる愛で全人類を支配してやりましょう!!――全人類に優しさと思いやりを持たせるんです。そうすれば綺麗な桜の周りをゴミで汚してそのまんまにしておくような人なんて居なくなりますよ」  「――できるか? そんな夢物語みたいなこと」  「何言ってんです。魔界を統べる魔王様ですらここまで変われたんですよ、それに比べれば人間を変えるなんて簡単なものですよ」  「そっか――そうだよな! 俺達なら本当にできるかもしれねえ――よっしゃ!! 一丁やってやろうか!」  「その息です!――あっそうだ、私お弁当作ってきたんですよ、腹が減っては戦はできぬっていいますしそろそろお昼にしましょう」  「マジで!? サンキュー青洲さん!」  「………」  「ん?どうした青洲さん?」  「――お願いしたいことがあるんですけど聞いていただけますか?」  「お願い? なんだい?」  青洲はモジモジしていてなかなか次の言葉を発っそうとしない  「どうしたの青洲さん?」  「――青洲さんじゃなくて………」  「え?」  「青洲さんじゃなくて名前で呼んでもらえませんか?――来夢って呼んでいただきたいんです」  青洲……否、来夢は顔を真っ赤にしてそう言った。  「別にいいけど――来夢……これでいいか?」    来夢の真っ赤な顔がさらに赤くなって行き、つられて王真もなんだか照れてしまう。  「――もう一つお願いいいですか?」  「え、あぁ、なに? 青……じゃなくて来夢」  「わ、わたしも魔王様の事を名前で呼んでいいですか?――王真様って」  「――べ、別に来夢の好きにしなよ」  「ありがとうございます――王真様!! ふふっ王真様、王真様、王真様!!」  来夢は嬉しそうに何度も王真の名を連呼しながらくるくると回り始めた。  そんな来夢の姿を見ていると王真は体が熱くなるのを感じ初めていたが、  ――夏のせいだよな……  と考える事にする。  「――王真様、早く手を洗ってお弁当食べましょうよ」  すでに回るのをやめていた来夢は手洗い場へと向かっている。  「あぁ、すぐ行く」  そう答え来夢の元へと歩いていると来夢がクルリと振り向いた。その表情は満面の笑みで一昨日の満開の桜に劣らないどころか遥かに凌駕している美しさだと感じ王真は見惚れた。  「王真様――大好きです!」  来夢の口から伝えられたその言葉に、体の熱の原因が夏の暑さのせいではないのだと王真は気づいた……
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