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「まぁ、良いじゃない、ゆっくりして行って。来てくれて嬉しいわ」  彼の苦労も悲しみも、私は理解できると思う。きっと私と繋がるものがあるはずだ。だから私は満面の笑顔で彼の前に座る。 「夕食はまだでしょう? 食べて行ってね。腕を振るうから! 」  彼の表情が緩んだ。以心伝心と言うのだろうか、彼も私の思う事を察した様だった。  聡は私の知る聡のままだった。お祖母ちゃんに仕込まれたと言う綺麗な箸遣いもそのまま。綺麗な右手が扱うそれはちょっとした芸術だ。  私の話を聞き、共感し、アドバイスをくれる彼。私を撫でる手も3年前会った聡と同じだった。  私は少しだけ彼に甘えて、彼も少しだけ私に甘えて、そして夜は更けた。 「もう行かなきゃ」  寂しげな微笑みで言う彼に、私は胸の痛みをこらえられなかった。そしてそれがまるまる顔に出ていたのだろう、今度は彼が満面の笑みで言った。 「大丈夫、必ず戻るさ。君との約束は破らない」  その顔でそれはずるい、けれど私はそれだけで力をもらって笑顔を向けられた。  聡が帰って行った後、一人きりで私はこう呟く。 「今、あなたはどこにいますか? 私はここにいます」
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