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興奮に膨張した背中の青い羽根が、真っ赤に染まった頬に両手を当てたロキの全身を一気に包み込んだ。
「もう無理〜🎵じゃあねぇ」
更に羽根は戯けた声とともに強い閃光を放ちはじめる。
蓮は片手をかざし眩さに一瞬、目を細めた。だが再び見開いた時にはもう、その場にいた青い羽根の女の姿は消えていた。
「何だったんだ!今のは.....」
悪い夢をみているようだった。
酷い倦怠感に襲われながら膝を持ち上げた瞬間、全身を針の様に刺す視線に蓮は初めて気がついた。ゆっくりと静まった店内を見渡すと客とホステス達全員が顔を向けている。薄暗い照明の下であれどその表情は訝しげであることがわかった。
「......会計を」
蓮はふらつきながら逃げる様に店を出た。幸いキープしていたボトルの中身は全て消えた。もうこの店には二度と飲みに来る事は無いだろう.......
──蓮が店を出てしばらく経ち、ざわついていた店内が通常の落ち着きを取り戻しはじめた。
「今の若い男、なんだかヤバかったね」
カウンター奥の席の客がチーママに片手を添えながら引き気味の口調で話しかける。
「大丈夫。もう来ないわよ。安心して」
完全に興醒めしてしまった目の前の客へのアピール。引き攣った愛想笑いのチーママは蓮が先程まで座っていた席に向けて塩を撒くフリをする。
「全く.......あの人、何か危ないクスリとかやっていたら嫌よねぇ」
チーママの細い眉が寄った。
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