一時間後

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 カーテンの隙間から差しこむスポットライトの朝日。金色の光を浴びる全身純白のタキシード姿の若い男は目深に被った同色のシルクハットのつばの下でミチルの反応を愉しむ様に口角をあげていた。  更にミチルを驚かせたのはスリムなスタイルの背中に生える大きな白い羽根。大ぶりな一枚一枚からはプラチナの微粒子が生き物の様に煌めき、彼の長い銀の髪は風もないのに揺らめいていた。  見ず知らずの者が自宅に上がりこんだ恐怖と混乱も忘れ、目の前の存在のあまりにも神々しさに、ミチルはただ呆然と立ち尽くし声を失う。 「お初です。ワテは天使。蛇とお呼び下さい」  シルクハットを脱いだ蛇という名の天使が、うやうやしくミチルの前で礼をした。  
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