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「ああ、すみまへん!そろそろ時間ですのでおいとまします」
蛇は胸元から徐に取り出した金の懐中時計を開くと驚きの声をあげた。素早く身を翻し見事な羽根をバサリと広げると朝日が差す、ベランダに颯爽と歩き出す。
「あなたは一体....」
後を追うミチルの声に蛇はピタリと足を止めて肩越しに振り返った。その瞳はいい事を思い出したかの様に何故か嬉しげで、更に口調も明朗に変化している。
「ああ、お代は後払いと聞いてます。きっちり仕事はしますさかいに、ご安心を。それともう一つ忠告を。ミチルはん、幸せの青い鳥なんてもんは待っといても無駄ですに」
蛇はそういい終わるとキレ長の目を細めながら人差し指を当てた唇の端を意味ありげに歪ませた。
「ミチルはんの姉さんがそうでしたやろ?」
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