side 蓮

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「今井君、確か先週、朝日奈ホールディングスの本社に急ぎの書類を届けてもらったよな」 「ええ、受付に確かに手渡しましたが。それが何か......?」  ヘマをやらかしたのだろうか。蓮は口につけかけたコーヒーカップを皿に戻し、表情を強張らせた。 「違う違う!いい話なんだよ」 「いい話?」  所長は店内の客の様子を見回しながら身をのりだすと右手を口元に添えて声を潜める。 「その時偶然居合わせた朝日奈ホールディングスの社長令嬢が、どうやら今井君に一目惚れしたらしいんだよ」 「....はあ!?嘘でしょ!?」 「嘘じゃない。朝日奈ビルに設置された防犯カメラと受付の記録から間違いなく今井君であると証明されているんだ。以前のうちの社員旅行の集合写真を見て当の本人にも確認してもらった。間違いないそうだ」  所長は未来の朝日奈ホールディングスの社長の姿を蓮に重ねた様に、手を揉み微笑んだ。 「やっぱり今井君は何か持ってる男だと感じてたんだ。近々当然朝日奈に就職し、この社を去ることになるだろうが今後も是非、懇意に頼むよ。俺は今井君の育ての親みたいなものだしね。ああ、そうそう。君の同棲している彼女とは早く別れなさい。どうせ、ネットで知り合った程度のものなら大した事ないだろう。.......あっ!」
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