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蓮の脳裏にミチルの顔が浮かぶ。
たまたま蓮の目に止まった『猫グッズ交流会』というインターネットサイト。そこで『全く金運を招かない招き猫の置物』という自虐的なミチルのつぶやきがきっかけで仲良くなった二人。馬鹿がつくほど真面目で努力家、そして『お人好し』。不器用な似た者同士が惹かれていくのも当然だった。
だが..........
「ああ、答えはクリスマスまででかまいまへん。楽しみにしてますさかい」
ウェイターはひょうひょうとした態度で丸めた伝票をテーブルの端に置かれた筒状のプラスチックの入れ物に挿し込むと軽く一礼をし、店内の奥へと歩き出した。同時に内ポケットのスマートフォンが震え、取り出して耳に当てる蓮。だがその顔色がみるみるうちに蒼白に変わってゆく。
「......すいません。給料が入ったら必ずお返しいたしますから」
背後の悲痛な蓮の話し声に銀髪のウェイター、『蛇』が再び緩めた口元に拳を当てて目を細めた。
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