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「グスン。いーもん。早く幸せパワーを集めるもん....。力よ、力があれば...兄様を...」
炎は無事に全て鎮火した。ぐったりとテーブルに項垂れ、白い泡に塗れるロキが半泣きになりながらテーブルの上に置いた両拳を握りしめる。やがて涙と鼻水に塗れた顔を持ち上げると蛇を濡れた瞳でキッと睨みつけた。
「とにかくあの人間の「幸福」は私が頂くからね!絶対に邪魔しないでよ!わかった?蛇!」
ロキはヒステリックな怒鳴り声を発して立ち上がると大きく羽根を広げ、一面に極寒の旋風を巻き起こした。空の消化器を握りしめたまま身をよじる蛇の髪と羽根が吹雪のように打ちつける白い風に激しくたなびく。その頃店内では徐々に客が騒ぎはじめていた。
「寒い。この店エアコン壊れてるんじゃないの?もう帰ろうか。イケメンのウェイターもいなくなっちゃったし....」
「おい!スネ夫!あいつマジでグーで殴る」
ぞろぞろと店を去る客の足音と店長の怒りの呟き。
「おい!ロキ、お前なッ...」
蛇は語気を強めて、風から身を守るために顔の前で覆った腕を解くとテーブルに視線を戻した。だがその瞬間にピタリと風は止み、もうロキの姿は跡形もなかった。
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