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「逃げやがった」
蛇は正装を解除すると、ほどけた背中の黒エプロンの紐を結び直しながら深いため息を吐く。
──ロキのやつ、めちゃくちゃや。なるほど今回は特にガブちゃん探すのになりふり構っていないみたいやな。あいつ、かなり強引に蓮はんの運命を捻じ曲げたみたいやし。さすが上級。そやけどあいつの幸せの価値観って一体なんなんやろうか。
「ま、そんなものは結局、よくわからないもんやけどな、よっしゃこれでオッケーや」
極端なアシンメトリーな蝶結びを背中に完成させると蛇は満足気に目を細めた。
「......よくわからないのは君の方だよ。今までどこでサボっていたのかな.....?」
物想いに耽る最中、突然ぞくりとした殺気が背中に突き刺さった。恐る恐る振り返える蛇の目に写ったのは両手を腰に当てて仁王立ちする店長(通り名はファルコンではなく〇〇タカ)の鋭く光った漆黒のサングラスの縁であった。
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