19人が本棚に入れています
本棚に追加
茫然自失のミチルに一礼をする桜鬼子。古びたドアが錆びた音を奏でながら閉まりきると無邪気な笑顔に影の色が差し込む。
桜鬼子、もといロキは壁にもたれかけたままのミチルの姿を思い描くと薄桃色の唇を更に歪めさせた。
ロキはドアに背を向けると軽やかにパチンと指を鳴らす。AVコスプレに近い秘書スタイルは瞬く間に正装へと変化し、青いミニのチャイナ服の背中から生える同色の羽根は陽の光を受けて煌めいた。
「あの調子なら、大丈夫ね。計画どおり🎵」
ロキは満足気に一つ頷くとアクロバティックに身を翻しアパートの廊下から軽やかに飛び立った。
「金よ。金よ!金さえあれば🎵お・か・ねよ、お金。私は幸せの青い鳥〜」
鼻歌混じりに寂れた繁華街のビルの間を抜けて凍雲が走る青空へと登ってゆく。
「......け、何が『幸せの青い鳥』や」
小さくなってゆくロキの背ろ姿を正装の蛇が密かに見送っていた。廃ビルの屋上の縁に乗せた片足の上に肘を置き、長い銀の髪を風に靡かせる。顎を軽く上げた不敵な笑みは蛇の仮面に隠された本来の顔。
「.....幸せはな。常に誰かの不幸の上にあるもんや。お前が操る金も結局は運命を捻じ曲げて誰かからくすねたもんやろが.....」
最初のコメントを投稿しよう!