side ミチル

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side ミチル

 あまりにも連続する予想外の出来事にミチルは精神的な限界値を突破していた。つい先日まで悩んでいた事は形を変え、雪崩の様に押し寄せている。  寝不足の身体を廊下の壁に擦り寄せながら台所を抜けてベビーベッドが置かれる和室に戻った。  障子を開けると黄金の逆光の中に浮かぶ黒い影がベビーベッドの前に立っている。 「誰....!?」  ミチルが目を凝らすと黒い影の姿が徐々にあらわになってゆく。スレンダーな体格に筋肉を纏った上半身と細身のブルージーンズ。腰部まで伸びた長い金髪を靡かせた美しい青年の背中からは純白の羽根が生えている。 「まさか、また天使なの?」    ルーベンスの絵画の様な高貴さとピエタの彫刻のように滑らかな白磁の肌、慈悲の眼差し。清純な存在にミチルはつい、本音を吐き出した。 「あなたが本物の天使なのよね。やっぱりあの天使は偽物だったんだ。私に幸せを叶えに来てくれたのよね....」  だが天使は《偽物》という言葉に反応し、苦笑いを浮かべながら首を左右に振り冷たく言い放った。 「.....幸せ?僕達は幸せとは、愛とは何なのかがわからないから今、集めているんだ。それに僕は今、君が偽物と言った天使の代理。ただのメッセンジャーだ」  
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