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「メッセンジャー?」
美しい天使はミチルに背を向けると壁際のキャビネットの上で開いた写真立ての中身を手に取った。
「なるほど、これがお姉さんのお守りだね...」
天使に紐を摘まれた赤いお守り袋は寂しげな表情を浮かべる美しい顔の前で僅かに揺れた。
「ええ。でも何も役に立たなかった。認知もせず、借金をさせ、挙句の果てには新しい女を作って逃げた最低のクズ男に姉は騙されて生涯を終えたわ。本当にお人好しにもほどがある」
「でも、お人好しに関してはミチルも同じだよ。お姉さんの借金の肩代わりは仕方がないにしろ、実の子供じゃないマユまで何故引き取ったんだい?苦労すると思うけれど」
ミチルは無言のままセラムの隣を行き過ぎると背後のベビーベッドの檻に両手をかけ、じっと中を覗き込んだ。いつの前にか先程まで閉じていたマユの瞳が開いている。少しクセのある髪ときめ細かい白い肌が姉の面影を感じさせた。
「それも仕方ないよ。だって、マユも私達みたいに親がいない子にさせたくなかったから...」
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