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ミチルの見開いた目の中にセラムが与えたビジョンが飛び込んでゆく。やがて全てが伝わりきるとミチルは再び涙を溢れさせ、がくりと項垂れた。
「でも....これでは蓮があまりにも....」
「ああ、そうだ。君が偽物と言った天使からのメッセージを伝えるよ。『負け犬ちゃんの顔は可愛いねぇ』だそうだ」
ミチルがハッと顔を上げると、セラムは忽然と姿を消していた。気がつくと彼が先程までいた畳の上には姉が大切にしていた赤い【お守り袋】が眩い夕日に照らされている。
「これを....使えば...」
ミチルは片手を伸ばして足元のお守り袋を拾いあげた。
【恋愛成就】の金の刺繍は何度も握りしめられたせいなのか薄汚れている。これは生命を自ら絶つほど欲していた姉の心の色だ。
どうしたらいい?私はどうしたらいい?
でも、だって七億円だよ......。
それに蓮が、蓮が.........。
その時、突然ベビーベッドのマユがけたたましい泣き声を上げた。
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