side 蓮

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 休日の午前中の割にはSAの混雑は無く、入り口近くの駐車スペースの端に車を止める事ができた。取り囲む様に停車したパトカーからわらわらと姿を現した高速隊の青い制服の警官達。  その群の中心を突きやぶる様にグレーのスーツ姿の男性が現れた。スクエア型のメガネがよく似合う美形の男性は車の側で身をかがめると蓮のガラス越しに眼を合わせた。 「ちょっと免許証みせてもらえますか。お忙しい中申し訳ございませんが、捜査にご協力よろしくお願いいたします」 パワーウインドを下げると同時に男は片手で警察手帳を開く。【三鶴城】という変わった苗字が蓮の目に焼きついた。 「何かあったのですか?特にスピードを出し過ぎた訳じゃないはずですよ。全く気分が悪い」  免許証を軽く流し見る三鶴城という刑事に噛み付く。不条理な職質に対する不安と怒りもあったが三鶴城に対して個人的な嫌悪感が蓮の語気を強くさせていた。  往々にして腹黒い奴に限って限りなく善人であり、口が上手い。  三鶴城の刑事らしからぬ柔らかな笑顔と所作が同様の類の人間に騙され、最終的には借金まで背負わされた蓮の苦い過去を甦らせた。  
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