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欠伸した、背伸びした、顔を向けてきた
それが全て嬉しくて、ニヤけ顔を必死に堪えて真顔を保とうとしていれば、彼女はもう一度ぐっと背伸びをする
はい、可愛い…!
「 狼くん……? 」
「 あ、はい…!狼くんのコスプレ…させていただいてます! 」
問われた事に、挙動不審みたいな感じで答えれば、彼女は俺の頭からつま先までを見てからベンチから立ち、近付いてきた
「( 背…ちっさぁ!!! )」
やっぱり身長が可愛い位に、頭が俺の肩よりちょっと下ぐらいの小ささに感動する
サイン会の時は事前に背を曲げてから、こんなにも差があるんだなって思うと…ハッとして少し背を曲げる
「 えっと、どうしました? 」
「 狼くんより…ちょっと大きな…狼くん 」
「( 声が…可愛い…… )…ですね 」
モロに赤ずきん!って感じの声のトーンだが、それよりもフワッとした喋り方だから可愛い
可愛い、しか言えなくなるぐらい可愛い…
狼くんより高くてごめんなさい!と思っていれば、彼女は小さく口角を上げる
「 格好いい…。本物の…狼くんみたい 」
「 ありがとうございます… 」
コスプレしててよかった!
写真用じゃないメイクでよかった!
そして、ダサく無いようにジム行ったり筋トレしてて良かったと思うぐらい
今までの事が報われた一言に、明日死んでも悔いはないと思う
いや、ある…
俺は如何しても言いたい言葉があるから、告げる
「 あの…兎月さん! 」
「 ん? 」
「 俺、4年前から貴女が好きです!聖女マリア学園で主人公の友達のセレナ役として、声を聴いたときから…ずっと貴女のファンです! 」
握手なんて求めたら、彼女の手が腐りそうだから、気持ちだけを伝えれば
彼女は少し驚いた表情を見せてから、ちょっと考える素振りを見せ、ぽんっと両手を叩いた
「 ゆうや…くん? 」
「 え…… 」
「 えっと…確か、熊…狼の…ゆうやくんだよね?1年前かな…サイン会に…来てくれた 」
名前を呼ばれた事に驚くも、
サイン会の時を覚えててくれた事に感動して泣きそうなった
鼻先が痛くなる感覚に、口元に片手を当てては小さく頷く
「 そう、です…。よく、覚えてますね…俺、今と姿…全然違うのに… 」
あの時、恥ずかしくて黒縁メガネを付けて前髪を思いっきり下げて、陰キャみたいな格好をして行って
こんな茶髪でも無いのに、覚えていた事が嬉しくて泣きそうになりながら言えば、彼女は答えてくれる
「 さっきの告白…印象的だし、スラッとした…おっきなお兄さんだから…覚えてるよ 」
「 …ありがとうございます…すみません、嬉しくて…泣きそうで… 」
「 ハンカチいる? 」
「 大丈夫です…自分のあるので 」
立ってるのが申し訳無くなってしゃがみ込んで、ポケットからハンカチを取り出して目元を拭こうとすれば、彼女もまたしゃがみ込む
「 余り強く拭くと、目元の肌が消えるよ 」
「 ありがとうございます… 」
もし、この出会いが運命で…
俺にチャンスがあるのなら、
どうか…どうか、貴女の隣に居ては駄目だろうか
狼くんのように木の影からずっと見てるのでは足りない…
君が欲しい………
「 兎月さん…俺と、結婚前提に付き合ってくれませんか…? 」
君の驚いた表情も、照れたように笑った顔も、これから全て隣で見たい
狼のような独占欲を
君だけに…向けてもいいだろうか
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