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狼秘書と赤ずきんの声優
「 だから何度言ったら分かる?事前調査無しでの、報告は信憑性の欠片もねぇから断ってるだろうが 」
「 言わせて貰いますけどね。信憑性も何も、調べ上げたところで…はなっから信じない社長に言われたく無いんですけど? 」
「 調べるっても、御前の紙きれ一枚程度の内容だろうが。このトータルグラフも、作らなくても餓鬼でも分かる 」
この二人は、会議中と言う事を忘れてるのだろうか…
片方は、我が戦略系コンサルティング企業の社長である夕凪 遼
此れでも高校生の時から一緒にいる腐れ縁の友達だ
32歳という若さにて、パリにある本社での実績が称えられ、
日本支部である、このビルへと派遣移動され、ひょこっと社長となったのはいいが…
其れが気に入らないのが…22歳という若さにて、この日本支部での実績No.1を維持している
朝陽 透羽
18歳の時に、此処の面接が受かり僅か2ヶ月で、依頼件数がトップになり、
そのまま様々な会社や個人経営の店を建て直した実力派の若手社員だ
我社は、日本の将来の成長を担う自動車、ハイテク、金融、医薬品といった産業を中心に、グローバル体制を反映したプロジェクトチームによって、
戦略立案やサプライチェーンマネジメントなどに幅広い知見を提供する、戦略系コンサルティング会社となっている
彼女はそのプロジェクトチームのリーダーであり、簡単に言えば纏め役なんだが…
会議の最中、夕凪社長が彼女が纏めた報告書が気に入らないのか、口を挟んだ事で、気の強い彼女もまた売り言葉に買い言葉を放ち、それがヒートアップして会議が脱線した
因みに、俺は夕凪社長と高校生時代からの腐れ縁とは言えど、仕事を共にしたのはほんの3ヶ月前からで
何方かと言えば、朝陽くんがここに来てからずっと前社長と共に見てきたから、彼女の方が仕事での付き合いが長い
だからこそ、二人の性格を誰よりも良く知ってるからこそ口を挟むのを迷う
「 始まった、マングース対コブラの戦い 」
「 今日はどっちが勝つだろうか… 」
そう、夕凪社長が来てから彼女との口喧嘩は毎日の様に行われるから、二人をマングースとコブラ、又は虎と龍…なんて言われるようになった
そんなバトルが勃発してる中で、火に油を注ぐ真似をすると思うか?残念だが、俺はしない
飛び火なんてゴメンだからな
好きなだけ言わせて置けば、その内決着が付くのを知ってる
「 大西製薬は、新しい癌に効く薬を開発したんですよ!?それによって株も上がっている 」
「 いつの情報だ。既に同じ癌に効く薬をアメリカの製薬会社が更に効果の出る物を、錠剤で作ってるからな。点滴による液体は古い 」
「 それはそっちの製薬会社がパクったんでしょ! 」
「 何の道、実験の成果を出して…利用者に新しい逸早く提供した方が勝ちだろ。大西製薬会社への返事は新しい薬を開発して出直して来い、で十分だ 」
「 っ……!もう少し、中小企業に優しくしてもいいじゃないですか!なんでそう、大手企業ばかりに肩を貸すんですか! 」
「 此処が、大手戦略系コンサルティング企業だからだ。いちいち中小企業にまで耳を貸していたらキリがない 」
「 ……… 」
何も言えなくなった彼女は、立ち上がっていた腰を下ろせば、その場はシーンと静まり返り、中小企業である大西製薬会社と話し合う案は無くなり、社長が提案していた大手企業を優先する事へと決まった
マングース対コブラの対決は、コブラが圧勝したな
まぁ、マングースである朝陽くんが勝つことは滅多に無いからこそ、分かっていた内容だが…
お互いに、一歩も譲らないから喧嘩になるんだよな
「 ゴホンッ。其れでは、今回の案件は… 」
態とらしい咳をしてから、彼等を書類の方へと視線を戻させ、話を続ける
何気無く腕時計へと視線を落とせば、10分程長くなってしまったと思うが、口喧嘩にしては早めに終わったほうだろう
下手したら30分とか長くなる場合があるから、早々に決着ついた時はこの場にいる全員が安堵する
「 流石…熊狼秘書。冷静沈着で格好いい 」
「 スラッとして、高身長。できる男って雰囲気がいいですよね 」
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