狼秘書と赤ずきんの声優

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ウィングネットを取り出し、首まで被ってからネット引き下げ、上へと持ち上げ、髪をネットに入れ纏め、変に1ヶ所に纏まらないように手で移動しては、少し出てる部分を一本櫛の手持ち部分の先端で入れていき、鏡を見て出来たことを確認する 「 よし、こんなもんか… 」 玉ねぎスタイルになれば、額周りの皮脂をしっかりと拭き取りリフトアップテープを使う 俺は少し横長だから、狼くんを真似て吊り目にする為にこめかみ辺りに貼り付けゆっくりと引き上げ、ネットに貼る 鏡を見て上手く出来たと思えば、反対もする 後は別に必要ない為に、この状態で最後のメイクをする 「 目元は作ってきたからなぁ…。肌… 」 顔を下地やらつけて塗ったくって、首周りの色を濃くする 俺が色白だから、狼くんが少し褐色っぽいから濃くする必要があるんだよな… 余り白過ぎると健康感がない 「 日焼けサロン行きたくないし、仕方無い 」 肌の色をワントーン、濃くして健康肌の小麦色系に変えてはやっとカツラにはいる メイク用品を片付け、ミルクティー色のウイッグを取り出し、 ウイッグ用の櫛で軽く整えてから、頭部の旋毛の位置と前髪を確認して頭に被る 手で前髪を整えてから、櫛で分け目を作り、ウイッグ用のスプレーで軽く固める 夜に、事前に髪型は作ってきたから、整える程度でいいのは楽 「 よし…出来た 」  完璧じゃないか?と鏡を片手に角度を見る 俺は写真用じゃなく、直接見て似てるか、似てないかを決めるから 写真用のメイクにしては薄いだろう 写真用ならもう少し濃くしないと、顔の凹凸がなくなりのっぺらぼうに見えるからな… 写真を撮られない事を願っては、服を着替える為に立ち上がる 脱いでたズボンを畳み、コスプレ用のズボンを履き、上を着ていく  最後に小物を取り付け、準備が出来れば貴重品だけ持ち歩く 「 暑い…… 」 外に出れば、流石に7月だと思う気温だ 8月、9月は兎月さんのライブイベント以外は参加しないぐらい、コスプレも止めている こんな暑い中で、ウイッグ着けて長袖、長ズボンにブーツ履いてるなんて、コスプレイヤーぐらいだろう 着物やロボット系を着てる人達を見ると凄いなって思う まだ、狼くんのアイドル服以外の私服は薄手で、着やすいけど… 首に付けてるチョーカーとか、じんわりと汗が出る気がする 何気無く指で、気だる気にチョーカーに触れ、木の影で休んでいればアイ•ドールのコスプレをした女性二人が声を掛けてきた 「 アイ•ドールの狼くんのコスプレですよね?良ければ、その姿…撮影してもいいですか? 」 「 さっきからすっごく格好いいなって思って! 」 「 すまないけど…名刺交換してない子に、撮られるの嫌なんです。ごめんなさい 」 「「 あ… 」」 じっとしてるとロクな事にならないな、と思いペコリと挨拶してから、その場を離れる 声を掛けてきて、只趣味で撮る人って… 勝手にネットとかにUPしてるんだよな 適当なコメントセットなのを見ると嫌だから、撮影が多そうな場所から離れて休めそうな場所を探す ステージイベントが始まるまで、もう少し時間が掛かるから休憩する 「 ん? 」 ふっと、大きな木の下に木製のベンチがあり、木陰になってた為に良さそうだなって思い近付けば、先客がいた それも後ろから見てもわかる、赤ずきんのコスプレをした人だなって思い、なんとなく顔が気になった もし、適当なら軽く挨拶して、距離を置いて横に座らせて貰えばいいと思い、ゆっくりと前に回り込めば息を飲む 「 え……( えっ…嘘…マジで…?? )」 叫びそうになった口を片手で抑えれば、そこには赤ずきんのコスプレをした、兎月さんが眠っていた ここに来るまでに数人、赤ずきんのコスプレをした人を見てるが、4年間ずっと見てきたし、何度もライブイベントには行ってるから、見間違えるわけがない 「( 顔ちっちゃい…!身体華奢…!まじでお人形さんみたい!! )」 こんなに近くで見たのはサイン会以来だし、あの時は1分も無いぐらいだから、忙しかった けれど、時間が止まったと思うぐらい 心地のいい風が吹き抜ける此処は、昼寝にはうってつけだけど、有名声優がこんなところにいて、大丈夫なのだろうか?って心配になる ポケットから腕時計を出して時間を見れば、イベントステージにはまだ時間はあるけど… 「( いや、でも…可愛い!マジ、可愛い…尊い!! )」 語彙力無くなる位に、全てのパーツが可愛い 長い睫毛も、すっと通った鼻筋や、小さめの口、シャープな小顔や、ハーフ顔の部分 綺麗なフランス人形とか、球体関節人形のカスタムドールみたいな、雰囲気が正に2.4次元だと思う この2m位の距離から近付けない 「( めちゃくちゃ心臓バクバクいってる! )」 こんな鼓動、サイン会で名前を問われた時以来だ いや、それ以上かもしれない だって、今…彼女が寝てるってことはオフって事だろう? オフの時に会えるなんて、 今日…来てよかったと思う! 「( うわ…ずっと眺めていたい…! )」 この時間が永遠になって止まればいい そう思うぐらい、可愛い寝顔を眺めていれば落ちてきた葉っぱが手にあった事で、彼女は睫毛を揺らし、ゆっくりと目を覚した 「 ん………。ふぁー…ん? 」 ごめんなさい… 今、すげぇ…気持ち悪い顔してるかも…
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