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だから僕もここに来た。
アルファを生むために。
だけど、オメガと分かっていれば僕の年で他家のアルファに嫁ぐのは分かるけど、僕の場合見た目でオメガだと判断されても、発情期が来ていなければ診断もしていない。なのにどうして?そう思っていたけれど、ここに来て分かった。僕が嫁ぐアルファはそんなに若くなかったからだ。
その人は、見た目は30代前半くらいに見えるけど、彼はアルファ。見た目通りの年齢じゃない。
この落ち着き方を見ると、結構上の世代だと思う。
どうして今までオメガを娶らなかったのだろう?
アルファなら黙っていてもオメガは寄ってくるし、チャンスもあったはず。それにさすがアルファ。すごくかっこいいし、こちらの一族もかなり古いから、アルファとしての力もかなり強いはず。
一昔前なら血統を大事にしていたけど、今はオメガであれば自由恋愛で番うアルファの方が多い。
そもそも一族内に生まれるオメガがすごく少なくなってしまったのだ。それに相まって、社会がもうそういう時代になっている。必然的に一般のオメガを選ばざるをえないのだ。
だけどこの年まで番を持たなかったから、いま唯一番を持たない僕があてがわれたみたい。まだオメガだと確実に分かっていないのに。
多分この年まで番わなかったから、もう周囲から諦められているのかも。でもアルファである以上、表向きは一応子供は残さなくちゃいけないから、とりあえず僕が選ばれたのだと思う。これで僕が本当にオメガでアルファを生んだらラッキー。でももし僕がベータだったとしても、きっとすぐに別のオメガをあてがわれるのだろう。だけど今は他にオメガはいないから、必然的に結婚しなくていいことになる。
何でもいいけど、僕はこの人の立場を守る為にここに嫁いで来たのだと思う。
オメガでなくてもいいんだ。そう思ったら気が楽になった。
僕は自分がアルファでないと分かった時、せめてオメガでないといけないと思った。これでも直系の血筋。なのに、ベータだったらそれこそ一族の恥だし、僕を生んだ母の立場も悪くなってしまう。
父と母は自由恋愛じゃない。
父は一族を継ぐことが決まっていたので、他家のオメガと結婚した。
もうあまり生まれないオメガ。母はたまたま年の近い次期当主がいたから、父に嫁いできたんだ。そしてその役目を果たして、二人いる兄は二人共アルファ。
さすが直系筋というのか、二人とも性の出現は早くて、小学校の高学年にはその力が現れた。だからきっと母はほっとしたと思う。だけど年の離れた三男の僕は、見るからに線が細くて、とてもアルファには見えなかった。
生まれた時から小さくて、それは成長しても変わらなかった。骨が細く、筋肉も付きにくい。それに大人しい性格で、おっとりしている。
周囲は早くからオメガを疑ってたけど、成長してもその性は出現しなかった。直系筋の場合、兄たちのように小学校高学年には初めての発情期が来ることが多いのに、僕は発情期が来ないままこうして小学校を卒業してしまったのだ。だけど、両親は直系同士での結婚。ベータが生まれるはずがないと当然のように思われて、まだ確定前なのに嫁がされてきたのだけど、これでもしベータだったら・・・そう思うと僕は怖くて堪らなかった。もし本当にベータだったら、僕はどうなるのだろう。嫁ぎ先を追い出され、実家に戻されるのかな。それとも一族の恥だと言って、家に入ることも許されないかもしれない。それに母は、きっと僕のせいでもっと辛い思いをすると思う。
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