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第4話:人間の三大欲求
立ち上がって去ろうとして俺の足に、OL岩倉真美がしがみついてくる。
「アナタしかいないんです! 私を助けてくれるのは!」
先ほどと同じようにノーブラの胸の感触が、俺の足にある。
「お願いします! 食料をもっと分けてください! はぁ……はぁ……」
お粥を食べたことで、彼女も代謝も出てきたのだろう。
混乱して興奮した真美は、胸元に汗をかき始めていた。
更に混乱で息も乱れ、薄着の彼女は淫らな色香も醸し出している。
(また飢餓の恐怖で、俺がオスで、自分がメスであることを忘れたのか)
もしも俺が性欲を抑えられない普通の男なら、色香に負けて今すぐ真美を押し倒しているだろう。
「助ける、だと? なんで赤の他人であるアンタを、俺が助ける義務があるんだ?」
だが俺はそんな男ではない。
そして冷たく突き放す。
何故なら今は非常時。
どう考えても他人の命まで構っている状況ではない。
最優先で自分の命を、自分自身で守る必要があるのだ。
「――――っ⁉ そ、そんな……で、でも沖田さんは、この食料を分けてくれたじゃないですか⁉ それって優しい人だからですよね⁉」
「俺が“優しい人”だと? 勘違いするな。その食料を渡したのは、一週間の情報を提供してもらった“対価”だからだ。もしも、もっと食料が欲しければ、他の対価を出して交渉してこい」
一週間寝込んでいた自分にとって、真美の情報は二日分の食料の価値があった。
「ほ、他の対価……って、もう私が知っていることは何も……」
部屋に引き籠っていた彼女には、これ以上の情報はなかった。
俺の足に抱きつきながら、彼女はアワアワしている。
「そ、それならお金を支払います! お財布に二万円ならあります! 足りないようでしたら、こっちの通帳に五十万円くらい入っています! 全部対価として支払うのでお願いします! 食料をもっと分けてください!」
真美は財布と通帳口取り出し、俺に差し出してきた。
短大二年間のバイトと、OL一年間で貯めていた預金。まだ21歳の彼女にとって大事な全財産だという。
「金で支払うだと? 本気で言っているのか? 一週間以上も何の救援活動がないこの無政府状態で、そんな紙ペラや数字が役に立つと、本気で思いっているのか? それなら今すぐ近所のコンビニでも行ってこい」
「コ、コンビニ⁉ でもマンションの下は、あいつら子鬼が……うっぷ――――」
ベランダから見てきた惨殺を思い出したのだろう。真美は思わず吐き出しそうになる
この分だと一人でマンションから出ていくのは無理だ。
「理解できたか? つまり今の俺が対価として欲しいのは、食料と綺麗な水、燃料……つまり人間の“三大欲求”を維持できる必須品だ」
人間は生きていく上で“生理的欲求”を満たす必要がある。
その中でも更に大事な欲求カテゴリーは、有名な三大欲求。
「睡眠欲」「食欲」「性欲」の三つだ。
サバイバル状態で人間はこの三つを必要とする。
つまりサバイバル活動とは大げさに言えば、三大欲求を満たすための活動なのだ。
「そ、そんな……綺麗な水も食料も、私は持っていません……そんなの無理です……」
対価の内容を聞いて、真美は更に泣きそうになる。
何故なら彼女が必要としているのも食料と綺麗な水なのだ。
つまり俺が助けるべき対価を、彼女は何も有していないのだ。
「そうか、何も出せないのか? それじゃ、俺はいくぞ」
「――――お、沖田さん⁉」
「タダで助けてくれるお人よしが、餓死する前に助けに来てくることを、祈っておく」
呆然としている真美を放って置き、俺は部屋を急いで出ていこうとする。
できれば明るいうちにマンションの周囲を確認したからだ。
「ま、待ってください! 今、沖田さんに、見捨てられたら、私、絶対に死んじゃいます……」
「その可能性は高いだろうな。だが俺に何も対価を支払えないんだろう? 俺の欲する三大欲求を満たしてくれる対価を、何か持っているのか?」
仕方がないので少しだけヒントを出してやる。
呆然と立ち尽くす真美の身体に、わざと意図的な視線を向けた。
大きく膨らんだ胸元と、無防備に素足を出している太ももを注視。
あえて露骨な視線で犯すように、彼女のメス部分を舐めまわす。
「――――っ⁉ い、今の私が対価として払えるモノって……――――あっ⁉」
その時だった。
真美は表情をハッとさせる。
ヒントを受けてようやく気がついたのだ。
三大欲求を満たせるモノを、若い女である自分が持っていることに
「――――っ…………で、でも……それだけは……絶対にいや……」
だが彼女は口にすることを躊躇している。
何かのプライドが邪魔をして、口に言いせないのだ。
「どうした? 何もないなら行くぞ。今は時間がおしいからな」
「ま、待ってください! あ、あります……沖田さんの性欲を解消する対価なら払えます……この身体で……」
真美はツンとした胸を、無意識のうちにギュッと右腕で。
下半身を短パンの上から左手で隠す。
「たしかに、その身体には価値はあるな。それなら対価について交渉するとするか」
俺は部屋を立ち去ることを中断する。
「うっ……うっ……」
こうして俺の性欲を解消する方法について、無防備で若きOLの真美と対話をすることになった。
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