第5話:交渉

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第5話:交渉

 交渉をするためにリビングに戻ってきた。  小さな白いソファーに腰を下ろす。 「うっ……うっ……」  一方で真美は部屋の端に立ったまま。  身体を守るように、腕で胸を隠して立っている。  俺をオスとして警戒しているのだろう。 「さて、それじゃ対価について交渉を始めるか。どんな方法で俺の性欲を満たしてくれる?」  だが俺は構わずにビジネスライクに話を進めていく。  時間が惜しいからさっさと話をつけたいのだ。 「て、て、手で……」  真美は肩を震わせながら、小さな声で提案してきた。  おそらく彼女は性に関して、かなりプライドが高いのだろう。  だが俺はそんなことは気にしない。 「なるほど“手”か。それなら渡せる対価はこれだけだ」  俺はリュックサックから非常食をテーブルに置く。  大人一日分の非常食だ。 「えっ⁉ た、たった、それだけ⁉」  予想外の少なさだったのだろう。真美は驚いた顔で抗議してくる。 「当たり前だろ? “手”なら自分でも可能だからな。そんなことは中学生でも知っている性知識だろ? だから今の状況下だと俺が払えるのは、これが精一杯の対価だ」 「そ、そんな……たった一食だけなんて……すぐに死んじゃうよ……」  プライドが高い真美にとって、“手こき”ですら必死の提案だったのだろう。  予想の何倍も少ない食料に、立ったまま絶望感に打ちひしがれている。  ふう……仕方がない奴だな。  交渉がスムーズに進むように、もう少しプランを提案してやるか。 「ちなみに、それ以上ならなら食料を3日分だ」 「えっ……3日分も⁉」 「ああ、そうだ。自分の口では自慰行為はできないからな」  俺は理屈屋だがケチではない。  正当な行為に対しては、多めの対価を支払う男なのだ。 「三日分も……でも、そんなこと出来ないわよ……」  プライドが高い真美の感情が、目に見えて大きく揺れていた。 「うっ……どうすればいいのよ……死にたくないよ……でも、そんな下品なこと無理……」  自分が餓死する恐怖と、性に対する高いプライド。  空腹で思考能力が落ちていた彼女は、冷静な判断をくだせずにいた。  ふう……仕方がない。  手早く交渉が終わるように、更に交渉の枠を広げてやるか。 「さらに上の選択肢なら、食料は5日分だ」 「――――えっ⁉ 五日分も⁉」 「ああ、そうだ。あと、俺がちゃんと満足できたら、差に追加報酬だ。オプションで、俺はまたこの部屋に来てやる。もちろん対価の交渉にだがな」 「――――ッ⁉ ま、また助けに来てくれるの⁉」  今日の交渉の中で一番大きく、彼女の目はカッと見開かれる。  “俺がまた部屋にやってきてくれる”  先が見えない状況にいる真美にとって、これが何よりも魅力的なオプションなのだろう。 「……いや……そんなのに絶対にいや…………でも、それ以外だと餓死する可能性が……」  プライドが高い真美にとって、かなり厳しい条件なのだろう。思考の板挟みになりながら苦しんでいる。 「時間が惜しい。早く決めろ?」 「――――っ⁉ わ、分かりました……一番上のグレードでするわ……」  時間制限を伝えたとで、彼女の中で何かが吹っ切れたのだろう。 「ほほう、そうきたか」  更に驚いた。  俺が提案した中で一番上のグレードを、真美は受理したのだ。 「……うっ……ど、どうして、こんなことになっちゃったの……もう死にたい……死にたくないけど……」  だが、まだ心の底では納得しきっていないのだろう。  真美は歯を食いしばりながら、大きな屈辱に必死で耐えようとしていた。 「状況的には賢い選択だな。それじゃ、さっそく頼むとするか」 こうしてプライドが高いOLの真美に、口で奉仕をしてもらうのでった。
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