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第3話:隣国ハメルーン
王国を追放されてしまったボクは、隣国の都市国家ハメルーンを目指すことに。
道中で色々あって、銀髪のマリエルの馬車の乗せてもらう。
しばらく街道を進み、前方に城壁が見えてきた。
マリエルが馬車の前方の窓を開ける。
「ハルク様、あれが我が街ハメルーンです!」
「おお、あれがハメルーンか」
ついに隣国に到着した。
それにしてもマリエルは『我が街』って、変な言い方をしているな。
もしかしたらハメルーンの方言か、何かの言い回しなのかもしれない。
町の人たちは全員が『我が街ハメルーンへ、ようこそ!』みたいな。
「新しい街か。楽しみだな。……ん?」
馬車が街に近づいて。妙なことに気がつく。やけに城壁がボロボロなのだ。
所々ボロボロで石が崩れている。王都の立派な城壁とはまるで違う。
どうしてだろう?
「ハルク様、実はハメルーンは、あまり豊かな国ではないのです。特に最近は隣国のミカエル王国が、軍事と経済で圧力をかけてきて、物流が上手くいってないのです」
「ああ……そうだったんだ……」
ミカエル王国はボクが仕えていた王国。
今代の王になってから独裁的な体勢になった。軍事力の増強に力を入れて、周辺国に侵攻や圧力をかけていたのだ。
(そうか……この国にまで、被害が及んでいたのか。なんか、申し訳ないな)
最近のボクは国王によって、戦争の武具ばかり作られてきた。
関節的にマリエルの住むハメルーンに、悪影響を及ぼしていたのだ。
(よし。決めた。今日からハメルーン街のために、少しでも手伝いしよう!)
ミカエル王国には今さら未練はない。
新しい街のために頑張っていくことを、心の中で誓う。
そんなことを考えている内に、馬車は街の中に入っていく。
街の中もそれほど活気はない。やはりミカエル王国の圧力の、影響が大きいのだろう。
「それではハルク様。私の家にご案内いたします」
「えっ? あっ、そうか。よろしく」
そういえばお礼の件があった。
この街の状況だと、マリエルの家もそれほど裕福ではないだろう。
やっぱり上手く断ることにしよう。
馬車は街の大通りを進んでいく、かなり奥まで進んでいく。
小高い丘に到着する。
ここも周囲が城壁に囲まれていた。
城っぽい建物がある。
同じ敷地内の大きな屋敷の前で、馬車は止まる。
「ハルク様、お待たせしました。ここが我が家です。中にいる父に、ご紹介します!」
「うん……でも、ここって? 凄く偉い人が住んでいるような……?」
「はい、一応はここは、ハメルーンの王宮です」
「えっ……王宮? ということは国主って……」
「他の国だと“国王”という意味です」
「ということは……国主の三番目の娘のマリエルって、もしかして……」
「はい、一応は王女になります。ハメルーン国の第三王女のマリエル=ハメルーンと申します、ハルク様」
「えーー! マリエルって、お姫様だったの⁉」
まさかの事実だった。
ミカエル王国の王族とはまるで違うので、気がつかなかった。
あっちが下品なくらいに、豪華絢爛なドレスや髪型の人が多い。
比べてマリエルの格好や馬車も、どちらかといえば質素な感じ。
だから気がつかなかったのだ。
「ん? どうかしましたか、ハルク様? それでは父の所にご案内いたします」
「えっ、はい。分かりました!」
こうして一介の鍛冶師……現在無職のボクは、いきなり隣国の王様に面会することになった。
どうなっちゃうんだろう。
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