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 今回も石川さんは御馳走すると言ってくれたのだけど、それは丁重にお断りした。アサナさんはちょっと作ってみただけのバニラアイスというのをサービスしてくれて、これが美味しかった。  俺は美味しいものを食べ、アサナさんと石川さんの面白い話を聞き、俺は面白い話ではないけれど聞いてほしい話をできたことで少しだけ気持ちがスッキリした。  問題が解決したわけではないし、このモヤモヤを晴らすための答えを得られたわけでもない。  だけど、自分の気持ちを外へ出すこと、そしてそれをただ受け止めてもらえたこと、それがただただ嬉しかった。  店を出て、無性に岡崎に会いたくなった。しかし、もう時間的に遅いので電話してみる。  スマホからすぐに岡崎の声が聞こえてきた。 「遥希くん、こんばんは」 「おう。今電話大丈夫?」 「うん、だいじょぶ」  たいした話はしていない。それでも心が満たされる。自分の声が弾んでいるのがわかる。岡崎も楽しそうに話している。  好き。  何気ない話をしながら、話と話のわずかな隙間にその気持ちを忍び込ませる。  好き。  気づいてほしいような、気づかれると怖いような。  好き。  怖いのももちろんあるけれど、今はアサナさんと石川さんのおかげでちょっとだけ大胆な気分になっていた。  好き、好き、好き。  気持ちを伝えないのはナシよりのナシ、とアサナさんは言っていたけど、伝えなくてもこんなに楽しい。  好き好き好き好き。  ああ、胸がいっぱいで暖かい。 「なんか遥希くん、ごきげんだね」 「うん、そうだよ」 「何かいいことあったの?」  お前と話して嬉しいだけだよ。 「秘密」 「えー! 教えてよー」  ちょっと拗ねてみせるけど笑っている岡崎の声が愛しい。 「秘密なんだよ」  俺はバスが来たから、と言って通話を切る。バスの揺れは心地よく、目を閉じてしまえば眠ってしまいそうだった。
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