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 今日は遥希くんに振り回されている気がする。最初はボクと一緒におでかけするの嫌なのかなと思わせておいて、人ゴミからボクを守ろうとしてくれたり、満員電車では壁ドンだし(意図的じゃないと思っていたけど、もしかしてわざと?)、ずっと手を繋いでいてくれたり、外見を褒めてくれたり、しかも褒めてくれたときの笑顔、カッコよすぎるんですけど! ボクは胸を撃ち抜かれてしまって、もう動けない。なんて思ったけど、人通りが少し落ち着いたのを見計らって、遥希くんが屋台を見に行こうと誘ってくれると、ワクワクしてすぐに立ち上がった。ボクってば現金。  青森の花火大会でも屋台はたくさん出ていて、じっちゃに手を引かれていろんな屋台を渡り歩くのはとても楽しかった。ボクは綿あめが大好きで、いつもじっちゃに買ってもらっていた。買いたいと思ったけど、なんと綿あめの屋台は出ていないようだった。がっかり。  ボクがしょんぼりしていると、遥希くんがボクの手を引いて、水風船釣りに連れて行ってくれた。遥希くんは子どもみたいに無邪気に笑いながら水風船を釣っていて、ものすごくかわいい。遥希くんがこんなはしゃいでいるのを初めて見たけど、遥希くん、こんな顔をして笑うんだと思うと愛おしくてたまらなくなった。愛おしくて手がプルプル震えてしまうボクに代わって、遥希くんはボクの分の水風船も釣ってくれた。ほら、と渡されたのは白地に色とりどりの点が散っている花火みたいな柄の水風船だった。水風船の縛り口に輪ゴムが付いていて、そこに指を通すとヨーヨーみたいにして遊べる。遥希くんはボクの持っている柄の紺地のものを指につけていた。色違いのお揃いだ。遥希くんと何かをお揃いで持つのは初めてで、すごく嬉しかった。遥希くんがボクの白い水風船に、紺の水風船をぶつけてきて、やったな! とか言いながらボクもやり返したりして、楽しいが過ぎる!  スーパーボールもやたらと大きくてキラキラしたラメ入りのものを一つずつ掬った。遥希くんがスーパーボールを光にかざして眺めている。ボクも同じようにして自分の手の中にある、遥希くんのよりは少し小さめのスーパーボールをかざしてみる。 「俺、小さい頃、縁日でとったスーパーボールいまだに持ってる。綺麗だし、すげえ跳ねて面白いから好き」  スーパーボールはキラキラして確かに綺麗だけど、ボクの横で笑っている遥希くんの方がキラキラして綺麗だ。見惚れてしまう。 「うん、ボクも好き」  ボクたちは笑い合って、次の屋台へと向かった。  次にやって来たのは射的だった。ボクは全然当たらなかったけど、遥希くんは狙った的にコルクを全部当てていた。すごいすごい! とボクは興奮してしまう。大きい的は倒れてくれなくてもらえなかったけど、駄菓子を一つだけ獲得して、ボクにくれた。ラムネのお菓子だった。一生部屋に飾っておこうかな。  さっきまでボクのことを気遣いながらエスコートしてくれていた遥希くんは大人の男性の雰囲気を漂わせていてすごくカッコよかったけど、屋台にはしゃぐ遥希くんは子どもみたいでかわいい。花火大会、来てよかった。学校で会っているだけだとこんな遥希くんは見られない。振り回されたって構わない。  ああ、楽しいな!  射的の屋台から離れたところでそろそろ花火の打ち上げ時間が近づいてきたので、何か食べるものを買って会場に向かうことにした。ソースのいい匂いがして、遥希くんとボクは同時にその屋台の方を見た。屋台には、たこやき、と書かれていた。
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