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三
恐る恐る公園をみると、なんと、あの佐藤が一人でベンチに腰掛けていた。足をぶらぶら交互に揺らしながら、その様を自分で見つめているようだ。子供っぽい白い半袖のTシャツからは、あの焼けた肌がちらりと覗いていた。僕は咄嗟に物陰に隠れて考える。ああ、きっとそうだ、間違いない。佐藤がデート相手なのであろう。そうと気付いてたら、高揚感が湧き立った。佐藤と話せると思うだけで嬉しかったのだ。もう一度深呼吸をして、呼吸を整えてから公園に入った。
「ごめんね遅れて。待った?」
「あ、渡辺くん。いや、私も今来たところだよ」
「ああそうか。ならいいんだ」
彼女は、目をキラキラ輝かせながら僕の顔を覗き込んでいる。抗しがたい衝動が湧き上がった。佐藤に告白しようと思ったのだ。普通なら会ってすぐに告白するなんてイミフなんだろうが、そんなことはこの際どうでもいい。
「あのさ、俺君のことが好きなんだ」思いの外すらすらと言葉が出てきた。
佐藤は動揺していたが、すぐそのあとでパッと笑顔を浮かべて、「ふふ、私もよ」と晴れがましく微笑みながら言った。
だが、その甘えるような顔を見て、僕は途方もない孤独感に襲われた。彼女の目は、僕のことなど見ていないということに気が付いたのだ。何というか、暗い部屋に閉じ込められて、渡辺の主観体験のビデオを無理矢理見させられているような感覚である。不安感と嫉妬心がメラメラと燃え上がった。私は、その気持ちを払い除けるように、彼女の身体を抱き寄せてみた…
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