第3話:冒険者ギルド

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第3話:冒険者ギルド

 家出したボクは転移装置で、遠い国に転移。  ダランという都市国家に到着。  ここは初代勇者様の降臨の地で、魔物や野盗に襲われて廃れていた街。  サラという神官見習いの子を助けてから、ボクは当初の目的地である冒険ギルドに向かう。  ◇ 「おお、ここが冒険ギルドか!」  街の中央広場に、並んでいた建物を発見。  看板に冒険者ギルドを書いてある。  ついに憧れの冒険ギルドに、自分はやってきたのだ。 「うーん、それにしても、ここも外観が、ちょっとだな」  この街の建物は基本的に、(さび)れている。  その中でも冒険ギルドには別格。  壁や屋根に穴が開き、かなり危険な雰囲気だ。 「でも入るしかないな、よし!」  勇気を出して、扉を開けて中に入っていく。  中は薄暗い雰囲気。  目が慣れてきたので観察する。  入口の正面にカウンターがあって、受付のお姉さんが座って……いない。  横の壁には掲示板があり、色んな依頼が張られて……いない。  あれ?  何やら様子が変だな。  実家の書物で読んだ冒険譚と、少し内容が違う。  もしかしたら冒険譚が間違いなのかな?  あっ、でも奥に人がいる。  椅子が並んでいる待機所に、冒険者らしき人たちはいた。  でも活気はなく、どこか殺伐としている雰囲気だ。  そんな時、一人の大柄の男の人が近づいていくる。 「あーん? ボウズ、見ねぇ顔だな⁉ こんな場所に何の用だ⁉」  かなり筋肉隆々な人だ。  腰に大きな斧を下げて、かなり強そうな戦士タイプ。  あと顔が熊のように怖い。  あっ、見とれていないで、挨拶をしないと。 「えーと、ボクはハリトと申します。歳は十四歳で成人済みです。冒険者になりたくて、この街にきました!」  よし、ちゃんと挨拶を出来たぞ。  道中で練習してきたように、スラスラと言えた。  ん?  でも、相手の人の反応がないな? 「ぷっ……はっはっは……! 冒険者になりたいだと、ボウズ⁉ おい、みんな、聞いたか?このクソッたれの街にわざわざ来て、冒険者になる奴がいたぞ!」 「なんだと、本当か?」 「がっはっは……バカな奴もいたもんだな!」 「まったくだ!」  室内にいた冒険者が、一斉に笑いだす。  何がおかしいのだろうか?  でも、あまり良くない雰囲気なことは、分かる。 「えーと、この国の事情は、少しだけ聞いてきました。とても大変だとは聞いています。だからこそボクは冒険者になりたいんです! 困っている人を助ける“冒険王リック”のように!」  “冒険王リック”は愛読していた冒険譚の著者。  今から五十年前に実在した冒険者。  大陸中の大事件を、仲間と共に解決した英雄だ。 「ぷっはっはっは……おい聞いたか、このボウズ。“冒険王リック”みたいになりたんだってよ!」 「こいつは、ウケるぜ!」  またギルド内に失笑が、響き渡る。  馬鹿にされているのだろう。  でも、どこか違和感がある。  みんなはボクのことを馬鹿にしているが、どこか自傷的な雰囲気もあった。  何があったんだろうか、このギルドで? 「おい、そのボウズは本気らしいぜ! 誰か入団試験をやってやれよ!」 「ああ、そうだな。合格したら、入れてやろうぜ!」 「はん! それならオレにやってやるか!」  オレの前に出てきたのは、さっきの顔が熊のように怖い人だ。  この人が入団テストを、してくれているのだろう。  有り難い。 「おい、裏の鍛錬場に行くぞ、ボウズ!」 「はい、よろしくお願いします!」  熊のような人の後を、付いていく。 「おい、見に行こうぜ!」 「ゼオン相手に何分持つか、賭けようぜ!」 「バカ、何秒の間違いだろうが!」 「そうだな! がっはっは……!」  他の冒険者の人たちも、全員ゾロゾロ付いて来る。  どうやら見学をするのであろう。  なんか緊張する。  ゼオンさんという巨漢の人の後を付いていき、裏の野外の訓練場に着いた。 「さて、殺すと、さすがにマズイから、訓練用の武器にするか。おい、ボウズ、お前も、好きな武器をそこから選べ」 「あっ、はい」  訓練場には、色んな形の武器が並んでいた。  片手剣や両手剣、槍、斧、短剣、ハンマーなど、色んな武器が揃っていた。  刃の部分は丸くなっているが、本物の金属製だ。 「うわー、凄いな……こんなに沢山の種類の武器。ん? それに、ちゃんと手入れはされているぞ」  これで確信した。  ここにいる冒険者人たちのことを。 「おい、ボウズ、決まった?」 「あっ、はい、片手剣にします」  片手剣をチョイスする。  幼い頃から使っていたのと、近い感じの形状。  これなら十分に実力を発揮できる。 「それじゃ、試験を始めるぞ。ルールは簡単だ。ボウズは一撃でも、オレに当てられたら合格だ。お前が先に戦闘不能になったら、不合格だ。分かったか?」 「はい、分かりました!」  ルールは単純明快だった。  いつも姉さんたちと稽古しているのと、同じルールだ。 「あと、オレはこれでも“冒険者ランクB”。この中でも上の方だ。だから負けても恥じることはない。精いっぱい、かかってこい」 「ラ、ランクB……だったんですか……」  その単語を聞いて、思わず足がすくんでしまう。  何故なら冒険者ランクBは、かなりの強者なのだ。 (ヤ、ヤバイ……ボク、死んでしまうかもしれない……)  冒険者になる前に、まさかこんなピンチになるなんて……。
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