視線と君

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視線と君

「…大丈夫か?」 その男子が私に手を差し出す。 「…はい」 その手を借り、私は起き上がった。 その男性は、制服を着崩し、だらけた感じだった。 …もしかして、関わってはいけない人なのかな。 自分とはまるで世界が違うような、そんな感じがした。 「あんた、チャイム鳴ったのにいいのか?」 …そうだ!でも、もう…。 「もう、間に合わないですよね」 「何組?」 「…5組です。2年の」 「…同じだ」 同じクラスの子?…名前は何ていうんだろう。 「もう遅いかもしれないけど、一緒に行きましょうよ!」 私は彼にそう聞いてみる。すると彼は、驚いたような顔をした。 「一緒に…行っていいのか?」 「何でですか?一緒のクラスでしょ」 私は歩き始めた。少し歩いて、後ろを振り向く。 彼も、私の後ろを歩いていた。 そして私たちは、教室に向かった。 …遅刻して教室に入るの、緊張するなぁ。 変に目だっちゃうよね。 足が止まった。これはきっと、恐怖心が止めたんだ。 入らないわけにはいかない、けど入るのが怖い。 「どうした」 彼がぼそっとそう言ってきた。 「怖いなら、俺から入るよ」 そう言って彼は、教室のドアを開けた。 ドアと彼の間から見える教室は静まり返り、生徒たちがこっちに視線を集中させた。 やっぱりっ…。 そんな視線など気にせず、彼は教室に入った。 私もそんな彼を後を追い、教室へそそくさと入る。 『ねぇ…あれが霧野柊生?』 『そうそう、タバコ吸って留年だって』 『え、てことは先輩?』 『えー一緒のクラス〜?』 そんな言葉が聞こえてきた。 それは彼への言葉だった。 私たちは席に座った。お隣だった。 「ごめん、俺のせいで変な視線」 「ううん」 一体なにが…。 すると彼は、うつむきこう言った。 「俺、同じクラスだけど、1つ上なんだ。 タバコ吸って、見つかって、留年」 …そうなんだ。 私も思わず、うつむいてしまった。 「年上だけど、気にしなくていいから」 彼はそう、私に言った。
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