一員

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一員

「霧野はこの教室の生徒の一人だ。たとえ誰かが、席を放り出したって、霧野を入らせなくしたって、この教室の生徒だ。 名簿に載っているからじゃない、そんな形なんていらない。 霧野が来たいと、ここで学びたいと思う限り、この教室の一人だ」 そう言って先生は教卓の方へ戻っていった。 男子もバツが悪い顔をしながら、自分の席に座った。 霧野くんも自分の席を整え座った。私もカバンを横にかけ、席に座った。 「では、朝のHRを始めるか」 先生が連絡事項を読み上げている時、私は霧野くんにぼそっと言った。 「良かったね」 私がそう言うと、霧野くんはコクリとうなずき言った。 「ありがとう」 私は何もしていない。先生が守ったのに、何で私に? そんな事を考えながら、私は前を向いた。 このとき、かすかな胸のゆらぎさえ、私は気づいていなかった。
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