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プロローグ!!(インサート1)
「進学からのロケットスタートには大失敗したけど……諦めない、私諦めないんだから!!」
へっぽこ令嬢ココア様、嘆きます。
現時点で完走できる自信は無い新作、どうぞ3分程度の暇潰しにでもお付き合いくださいませ。プロローグその1。
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世界の中枢的都市、中央大陸。
それを構成する25区が1つ、國聖館区。多くの学園が立ち並ぶ、朗らかで希望的な学びの地区。
そこに、ある1つの誇り高き学園が君臨していた。
――私立、稜泉学園。
2つの校章を同時に有するその学園は、常に世界に注目されていた。
いわゆる、ブランド校なのである。
その"責任"を9割9分背負うのが、第一キャンパス。稜泉学園第一キャンパス。異名――「黑稜」キャンパス。
稜泉学園黑稜キャンパス、それはいずれこの進化と混沌が加速する資本主義社会を牽引してゆくのであろう、"最高峰"の少年少女たちが集う希望の楽園。
平均偏差値85超えの高度を維持し、「ブランド」という名の聖なる大地で構成された、万人に見上げられるべき最上層の世界。
――そこに、とある1人の少女が堂々と歩いていた。
【ココア】「ふんっ、ふんっ、ふんすっ(←威張り歩き)」
【女子】「ごきげんよう、ココア様」
【ココア】「あ……ご、ごきげんよう、です」
【女子】「ココア様、今日はいつもより制服の丈、長くなってませんか?」
【ココア】「あっ、分かりますか? 名だたるヤンキーは、何かにつけてなが~い服を着てることに気付きました! つまり、おっきな服を着てれば、私もより貫禄のあるヤンキーの仲間入りっていう寸法です! 裾なだけに!(←上手いこと言ったつもり)」
【女子】「なるほど、観察眼で得た仮説を実証している、というわけですね。流石ココア様ですわね。今日も自らの研磨に余念がありませんわ!」
【女子】「私はあまりその分野に精通しておりませんが、ココア様が言うのですから、間違いないですね」
【女子】「勉強になりますわ」
【ココア】「……ふ、ふふ~ん」
手を洗うのに絶対邪魔になりそうな、ダボダボ袖。階段で踏み間違えそうな引き摺り上等ロングスカート。
適度な機能性と質素な飾りに整えた学園指定の制服をガン無視するA等部第1学年、ココア様と呼ばれ笑顔で迎えられているその少女は。
【ココア】「……………………」
本日も、誰も居ない空間を見つけては。
こう嘆いていた。
【ココア】「――絶対ナメられてるッ!!!」
そして頭を抱えるか膝を着き項垂れる。これはココアの日常となりつつあった。
【ココア】「生あったかい視線がビームしてくるよぉぉ……!! 今日こそはしっかりヤンキースタイル、決め込んできた筈なのにぃぃ……ガン飛ばしてたのにぃぃ……!!」
この十二分の才知があって当たり前の聖域において、ココアのヤンキーセンスはハッキリいって貧弱だった。
否、それだけではない。ココアにはもっと、前面のセンターに出して深刻に考えなければいけないことがあった。それをココア自身も、実際自覚していた。
【ココア】「……私、全体的にステータスが低すぎる……っ!」
繰り返すが、ここは稜泉学園第一キャンパス。最高峰の少年少女らが集う高潔な学び場の黑稜である。
つまり、そこに立つ者たちが非凡であることは寧ろ当然なのである。
そこに凡人が立っていたら、寧ろソイツが目立つのである。
……それが、自分だと、ココアは結論に至ったのである。
【ココア】「そりゃそうだよ、気付けば裏口入学してたってだけで私そんな特技なんてモノ持ってないもん……! これからスーパーヤンキーとしてカッコ良く生きてく予定だけど、ここに入学できちゃう人たち皆さん既に輝いてるわけだし……!」
生まれた時点で自身に結びつけられていたブランドラベル。それが彼女の人生に敵や困難というものが殆ど一切現れなかった主因。
この聖域に入ったところでソレは変わらないのである。ココアは、周囲から高潔な御方なのだと自動で評価されているのである。
たとえヤンキーめいた行動に走っており、服装方面で校則違反をブッパしていようと、変わらぬ盤石のブランドラベルがココアを守り続ける。
にも関わらず、ココアは嘆く。
【ココア】「……何というか、カッコ良くない……! 私は、もっとイケてる感じになりたいんだから! 進学からのロケットスタートには大失敗したけど……諦めない、私諦めないんだから!!」
ココア、上を見上げ、階段を昇る。
【ココア】「姉様みたいな、スタイリッシュで、カッコ良くて、強い女になるんだ――!!」
空回り気味の決意を。
変わりたいという激情を、空に口にして……。
【ココア】「!? ふぎゃあぁああああ――!?」
それからなっがいスカートを踏んで階段を転げ落ちたのだった。
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