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 ──ただ、都市の、市街地との交感についていえば、無意識、なんてものではなくて、その場所その場所にひそむ「地霊」と思春期の少女の魂との交感、共振、そういうものではないのかなと今は考えている。 「うーん、なんだか難しいですね、なんとなくわかりますけど、でも、もう『落ちたい』子がふさわしい場所で『落ちる』ことができてよかったです」  ──まったくその通りだね。  らいむはうなずくと、犠牲者へ手向けた花々に一礼した。  これが最終カット。  番組に必要な素材、膨大なカットはこれですべて撮り終えた。  オンエアされるころには、もう時代遅れになっているだろうが……少女達の魂と交感する都市の地霊、その記録になれば幸いだ──。    きつい西日を浴びながら、らいむは「お疲れ様です」とねぎらってくれた。  そして、TwitterだかInstagramだかに自撮り(セルフィ)を載せるため、スマートフォンを自分に向けシャッターを切る。  こちらこそお疲れ様、と返しながら、重力の天使、そんな形容が頭によぎった。番組のエンディングには「重力の天使達に捧ぐ」と謝辞と鎮魂のテロップを入れよう──。                    【了】    20.Oct.2021 M.M.  Special Thanks : Ms.N
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