あつまれ

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あつまれ

「俺、この島を出ていこうと思うんだ・・・」  ついに言ってしまった。もう後戻りはできない。俺の胸に取り返しのつかない後悔が重く広がりだす。  君は驚き、「行かないで―!」と引き留めてくれた。嬉しさのあまり、俺は涙が出そうになる。  泣いているところを見られたくない俺は、顔を逸らし、精一杯気丈な声で、決意が固いことを告げた。  俺は昔、殺し屋だった。殺し屋になりたかったわけではない。ただそれしか出来ることがなかったからだ。  金次第で誰でも殺した。男も女も子供も老人も。  遠慮なく、慈悲なく、感情もなく。  俺の名前は裏社会で、まるでウイルスのように広がって行き、いつしか俺は伝説の殺し屋と呼ばれるようになっていた。  だがそんな俺に家族が出来た。俺は殺し屋から足を洗い、人並みの幸せを手に入れた。俺にはそれで十分すぎるほどだった。  しかし、幸せはそう長くは続かなかった。  ある日、出先から戻ると、家族が殺されていた。俺の居場所を教えたのは、かつて所属していた組織だった。  殺し屋から足を洗える訳がなかった。消えない罪を犯した人間は一生その罪を背負い、その業に圧し潰されながら生きていかなければならない。俺は甘かった。  その日から、復讐のみが俺の生きる目的となった。復讐の感情だけが、俺の身体を動かした。  俺は殺して殺して殺して殺した。  組織を壊滅させ、俺に向かってくるものは誰であろうと殺した。どうしてお前たちは動いているんだ? 俺の家族はもう動かないのに。  そしてその後には何も残らなかった。虚しさすら残らなかった。  俺は残った幾許かの金で遠い、遠い、誰もいない島に来た。  あいつらが立っていた地面と地続きの場所で生きるのも死ぬのも嫌だった。  その島でしばらく抜け殻のように生きていた時、俺は君と出会った。  君は優しい笑顔で俺を自分の島に誘ってくれた。君の島にはたくさんの仲間がいて、みんな生き生きと生活を楽しみ俺のことも、受け入れてくれた。  俺はこの島で生き返った気がした。久しぶりに、生きていると実感できた。  だが、風の噂で、組織の残党が俺を殺すため世界中で捜索を続けているという話を聞いた。  見つかるのも時間の問題だった。だから俺はこの島を出ていくことを決心した。  この島に俺の過去は持ち込ませない。障害は全て排除する。  俺の決意を後押ししてくれるように君は「応援してるよー!」と言ってくれた。  幸せな日が訪れないのなら、幸せな日が俺から逃げていくのなら、捕まえて、ボコボコにして、従わせればいい。  おれはここで、この島で幸せを出に入れる。  俺は自分に言い聞かせるように、君に告げる。 「全ての決着がついたら俺はまたここに戻ってくるよ」 「この、どうぶつの森に」  君は、笑顔で頷いた。 
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