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「…頼む」
涼夏に怪我をした右手の包帯を巻いてもらいながら、先程公園で起きたことを事細かく説明した。
「なるほどねっよく頑張ったよ!」
「麗奈って子にも言った通りムカついただけだよ」
「それでもだよ、やり過ぎちゃったのはいけないことだけど、悠くんが動けなかったら麗奈さんが襲われてたかもしれないんだよ?」
「……」
「でも麗奈さんは先輩だし、失礼な事言ったのは間違いないから、学校で会う事があったら謝ろ?」
「あぁ、そのつもりではいるけど…」
「それにしても、あの麗奈さんが助けてもらったとは言え引き留めてまで話しかけるくらいだから、本当に女の子に見えたのかもねっあはは!」
こいつ…一言余計なんだよな、まぁでも自覚はある、髪は染めたけど、この腰まで伸びた髪と中性的な顔は鏡を見た時、葉月姉ちゃんの面影を感じる時がある。
姉との繋がりを感じられる唯一の部分が、このコンプレックスな顔とは、皮肉な話だ。
「うるせぇ、女顔は自覚がある…あの麗奈さんって?」
「うん、麗奈さんは二年生の先輩なんだけどね、綺麗で高嶺の花って有名なんだけど男嫌いなの。イケメンが話しかけても無視、誰も近寄れないんだよ!」
「そうか、まぁ、男だとは伝えてあるから次に謝ってそれで終わりだな」
「もしかしたら仲良くなれるかもしれないよ!」
「あのな、トラウマってそんな簡単に乗り越えられるものじゃないんだぞ?謝ることすら避けられる自信がある」
「じゃあ、見た目だけでも謝るときまではそのままにしとかないとねっ」
つまり俺は女顔で髪も長いから女の子のフリをすれば平気だと。カチンときた。
くふふっと口に手を当てて笑う涼夏に今度は構わず左手でチョップを食らわす。
「ぐわっ何するのさー」
いててっ、とおでこを抑える涼夏。
「お前はさっきから一言余計なんだよ」
と話していると玄関の扉が開く音がした。
どうやら姉ちゃんが帰って来たようだ、涼夏が開けっ放しにしたリビングの扉から姉ちゃんが顔を覗かせる。
「ただいまー、あら、涼夏ちゃんの方が早かったのねー」
「おかえり姉ちゃn」
「なっちゃーん!悠くんがぶったー!…ふえーん!」
泣き真似をしながら涼夏が姉ちゃんに抱きつき泣き真似がバレないように顔を胸に埋める。
「こーら悠太って…その顔と右手どうしたの!?何かあったの!?」
やべぇ、何て答えよう、素直に言ってもいいのかな…
「それはね、転んだ拍子に悠くんが私の豊満なお胸に触れたから思わず、やっちゃった。てへぺろ!でも、ほら、不可抗力だからそれはお互いごめんなさいして解決しましたであります!」
ねっ!と泣き真似をやめた涼夏が俺にだけわかるようにウィンクしてきた。
たしかに、涼夏が知ってるなら姉ちゃんにまで心配をかける必要はないか。
それに、涼夏の無い胸に触れたのは嘘としても顔を涼夏にやられたのは嘘では無いしな。
「そ、それなら、いいのかなぁ?」
「うん!もーまんたい!ささ、着替えてお買い物いきましょ!お腹も空いたし!途中でご飯も食べましょー!」
着替えるために涼夏が姉ちゃんの背中を押してリビングを出ていくのを、涼夏に感謝しつつ見送る。
なるほど、確かに涼夏には誤魔化さずに話した方が、言い訳苦しい時に助けて貰えるかもしれないな。
今は涼夏に甘えておこう…なんつうか、甘えっぱなしだな、俺って…
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