12月17日、青春のひとゝき

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 ファミレスに着いた。  入り口横の窓枠は、サンタクロースの飾りとピカピカの金や銀のボールや旗で埋められている。  充希が扉を開けて、さゆりと彩がそれに続く。  充希が振り返り、さっき、通過した一枚目の扉が閉まるのを確認し、二枚目の扉を開け、店内に入る。  外は冷たい風が吹いている。店内に風が入らないようにと充希が気くばりしてるのだと気づき、さゆりは微笑んだ。  店内に入ると、壁のMerry Xmasという文字と、ピカピカ光る星が目に入り、天井には旗が張り巡らせてあった。  ピンクと白のかわいい制服のウエイトレスさんがウサギのように飛んできて、元気よく出迎えてくれる。  席は七割程度詰まっていて、楽しそうな話し声がするテーブルの間をすり抜けて、奥の方の席に案内された。  さゆりが奥に座ると、彩が、その正面に座り、充希(みつき)がさゆりの隣にちょこんと並んで座った。  注文をして、各自、ドリンクバーで飲み物を調達し、席に着いた。さゆりが、身を乗り出した。 「ねぇねぇ、悩み事って何?」  さゆりの言葉で、彩はさゆりをじっと見た。  すがりつくような彩の目は、ゆっくりと閉じられ、そして再び開いた。 「彼へのクリスマスプレゼントがまだ決まってないの。あと一週間だというのに。さゆりだったら、わかるでしょ。彼の欲しいもの」  今まで当惑気味だった彩の瞳に、不意に希望の光が(とも)っていた。 「だから、永井くんとはそこまで仲良くないって。ごめん。私にはわからない」  さゆりは、あの幼なじみのことを永井くんと呼んだ。哲也と呼んだ時の彩の悲しそうな、苦しそうな顔を思い出して。  彩は、いまだに二人の仲を疑っている。気をつけないとと、さゆりは思った。  さゆりの「わからない」と言う返事に彩はどことなく笑顔になった。  さゆりは、充希をチラリと見た。  それを充希が横目で確認して切り出した。 「じゃあ、3人で考えようよ。マフラーなんかどう?」  充希が、ドヤ顔で他の二人の顔を覗き込む。 「哲也、この前のデートの時にしてたマフラーをすごく気に入ってて、もうこれ以上良いマフラーに出会える気がしないって言ってた」 「そっかー」彩と充希がうなだれたのを見て、さゆりは下を向いてニタリと笑った。
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