12月17日、青春のひとゝき

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むくりと顔を上げた充希が、笑みを浮かべる。 「彼女からマフラーもらったら、きっとその時点で、お気に入りのそいつは2番目に転がり落ちるんじゃないかなぁ」  充希(みつき)が、自信満々の笑みを浮かべているが、彩は硬く口を結んで首を横に振る。 「あの時の哲也の顔を思い出すと、勝てる気がしない」  12月にもなると、日が落ちるのが早く、窓の外は彩の心のように、どんどん暗くなってきていた。  さゆりは、哲也のお気に入りのマフラーを知っていた。あれは、シスコンの哲也が妹からもらったものだ。哲也がシスコンだということは、今でも内緒にしている。あのマフラーはおそらく哲也の1番の宝物。この前のデートの時に、哲也が彩の前でしていたのも調査済み。  そして、プレゼントとしてマフラーはありえないことをさゆりは充希に事前に伝えていた。  さゆりはうつむいて、見えないようにまた、ニタリと笑った。 「かわいい名前付きキーホルダーとか?」 「そんなのは趣味じゃないと思う」  充希の提案を間髪入れずに否定する彩。  なかなか、わかってるじゃないとさゆりは微笑む。 「じゃあさ、デートの時に何か欲しいとか、何かに気を取られてじっと見てたとかなかった?」  さゆりの問いに、首をかしげる彩。目を見開き、自分のお腹の前で、上に向けた左の手のひらに右手の拳を上からポンと叩く。  仕草までがかわいい彩にさゆりが微笑む。 「真っ赤なスポーツカーを見て、かっこいいって、あんなの欲しいって言ってた」 「車なんて買えないし……」 「そもそも、免許ないし……」  さゆりと充希は、顔を見合わせ、肩を落とした。
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