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第10話「通信途絶」
「お、おいおい……」
頭おかしいだろ、コイツ……。
軍事衛星No.335さんよぉ───!! 下手したら死んどるわ!!
そして、
カールの目の前には地獄の光景。
いや、みるものによっては宝の山なのだろうが……。
「だいたい、ど、どーすんだよ、これ」
そこら中にごみのように置いているドロップアイテムは、A級~S級のモンスターが落としたドロップアイテムだ。
ちょっと拾っただけで、
※ 鑑定 ※
鬼の宝玉(レア度:S)
備考:換金アイテム
深紅に輝く宝玉。鬼の魂が結晶化したものと言われる
非常に高価な品
※ ※ ※
コィ~ン♪ ×3
※ 鑑定 ※
劣化エリクサー(レア度:A-)
備考:回復アイテム
エリクサーが劣化したもの。
HP、MP、SPを回復させるが体調を壊すことがある。
※ ※ ※
ドロ~リ… ×2
※ 鑑定 ※
鬼人の牙刀(レア度:S-)
備考:装備品
オーガジェネラルの牙を加工した短剣。
オリハルコン並の硬度を誇り、毒と麻痺の状態異常を付与
※ ※ ※
……etc、etc───。
「ちくしょうー。持って帰るけどさー!」
なんか、ほとんど敵が全滅したような気がする。
それ以上に、悪鬼の牙城がボロボロだ。さすがに焼け落ちはしなかったようだが、中のモンスターが無事だったとは思えない。
こうなったら、意地でも帰るしかない。
そして、これらドロップ品を積み上げてイアンどもに目にものを見せてやるのだ。
ガサゴソと背嚢にドロップアイテムを詰め込んでいくカール。
さすがに全部は無理なのでいくつか嵩張るものは諦めた。
それでも大した量だ。
「ふぅ……こんなもんかな?」
もちろん、一番重要なオーガロードの素材は忘れない。
一部だけとはいえ残っていたのは助かる。
「それにしても──────……」
カールはようやく一息ついて空を見上げる。
そして、ステータス画面越しに、『お星様』を見つめた。
いつの間にか空に瞬く無数の星。
(……アンタ、一体誰なんだい?)
眩しそうに空を見上げるカールに応えるでもなく、空の星はいつもと変わらぬように輝いていた。
ブゥン……。
※ ※ ※
スキル【通信】Lv3
能力:SPを使用し、離れた相手と通信が可能。
あらゆる言語および技術体系に対し通信ができる。
●拡張機能:固定通信ポイントの追加
〇通信ポイント1【雷の弾丸】
〇通信ポイント2【軍事衛星No.335】
〇通信ポイント3【な し】
※ ※ ※
突如増えた通信ポイント。
───軍事衛星No.335。
こいつこそが、おそらく、空から光の雨を降らせてカールを助けてくれた『お星様』だろう。
それにしても本当に星が願いを聞いてくれるとは……。まさか、ガキの頃に聞いたおまじないがこんな風に功を奏すとは思ってもみなかった。
それにしても、『お星様』か…………。
「……………………もしかして、話せたりする?」
ステータス画面に対して【通信】スキルを起動させる。
オーガロードの時から小ウィンドウは開きっぱなしだ。
ま、話せるわけが───。
『───話せます』
「話せんのかい!!!」
ビビったわ!!
ビビったわ!!
「なに、普通に会話してるの!? え? え? え? フレンドリー?!」
『いいえ。貴官は、友軍ではありません』
……そのフレンドリーとちゃうわ!!
「いや、そういうのいいから!」
っていうか、誰コイツ?! い、命の恩人さんだよね?!
『了解』
……素直か!!
「あーっと、そうじゃない。そうじゃなかった……。あの、」
『…………』
ついおかしなテンションになってしまったけど、彼?は命の恩人だ。
礼を失するわけにはいかない。
「……助けて、くれたんだよね?」
『はい。救難要請を受諾──────ザ……。現在、脅威対…の、87.54%を無……功しましたが、ザ』
ん? あれ? もしかして……。
「お、おい?! ちょ、ちょっと大丈夫か?!」
急に通信の状況が悪くなり始める。
この兆候は知っている。ギルドやパーティ間での通話でも、障害物や魔力が切れそうなときになる、通信途絶の一歩手前だ。
『い……え。通信圏…ザ───ザザ、生物の増援を…認。ザ──────の場を離れるこ………奨します』
「おい! 待てって! なぁ、なぁ! また……。また話せるか?! なぁ!」
お星様が何かを途切れ途切れに伝えている。
要約すると、モンスターの大半を殲滅したが、一部がまだ残っているというのだろう。
なにせダンジョンだ。連中は放っておけばいくらでもリポップする。
『要救、ザザ…要請に基づき、中継地──ザ、保します───座標23、ザ……-34332にて往還機を、ザッザ……す。付近の友…ザザ、ザ……実施さ、ザ───』
「は?! な、なんだよ?! き、聞こえねーぞ?」
何かを送るとかなんとか言ってたように聞こえたけど。
お星様からの使者?
…………なわけねーか。
「おい! なぁ、アンタ───」
バンバンとステータス画面を叩いて、通信の状況改善を試みるが、はたから見ればやべー奴だ。
『───ザ。惑星の影に………め、次のダイ……ト……───ザ、通可能は、』
途端に通信状況が悪化。
もはや、小ウィンドウも砂嵐の覆われている。
「おい! おい!! ちょっと、まだ御礼も言ってないぞ! おおおおおい!!」
『18…間24分……秒です。グッドラック───ザ』
ビュィ──────……ン。
ちょ……!?
バンバンバン!!
叩いてももちろん反応はない。
そもそもステータス画面は叩けないのだが……。
「ま、マジでやりたいだけやっていっちゃったよ……?!」
くそ……!
ありがたいんだけど、滅茶苦茶派手な攻撃のおかげでモンスターの怒りのボルテージはマックスだろう。
生き残りはわずかとはいえ、急いでこの場を離れたほうがよさそうだ。
とはいえ……。
「何か送るって言ってたけど…………??」
何の話だ?
中継?
座標……。
そして、
「…………往還機??」
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