第11話「何かが降ってきた───……?!」ライバルside

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第11話「何かが降ってきた───……?!」ライバルside

 全身埃まみれで言い合う男女が4人。  言わずと知れた4馬鹿───……もとい、イアン達だ。 「あーもう! どっちだよ!」 「こっちでは?!」 「あっちだってば!」 「いいからさっさとしろよ! モンスターが集まって来たぞ!!」  地図を失い(そもそも持ってきてない)、地面の目印が分からなくなった以上、勘で進むしかない。  とはいえ、イアンをはじめ全員がそれなりに経験を積んだ冒険者だ。  賢者グルジアは『右手の法則で脱出』とか言い出すし、  神官のエミリーは『神のお導き』がとか当てにならないことまで言い出すし、  重騎士バラムに至っては完全に丸投げだ。 「うっせぇ、うっせぇ、うっせぇっつーーーの!!」    ついにブチ切れたイアンは、超適当に、 「好き勝手喋んなし!! あーもー、だったらどっち行っても同じだろ? これ(・・)倒して決めようぜ」  手に入れたばかりの『聖剣』をこれ呼ばわりして、地面に軽く突き刺すイアン。  聖剣もまさか初めての出番が棒倒しに使われるとは夢にも思っていなかっただろう。  だが、全員なんだかんだで異論はなかったようで、イアンが突き刺した聖剣の倒れる先をジッと注視している。 「よ、よし離すぞ?」 「えぇ、聖剣が選んだ道なら間違いないでしょう」  (※注:んなわけあるか!) 「そうね! 聖剣が倒れた道───それはすなわち神の思し召しよ!」  (※注:そんな簡単な神様いるわけねーだろ!) 「で、どっちだ?剣の切っ先が向いてる方か? 柄の方か?」  (※注:どっちでもええわい!! っていうか、地面に刺してる時点で切っ先の向きで決めるとか意味わからんからね?) 「よ、よし! やるぞ!」 「「「おう!」」」  ドキドキ。  全員がかたずをのんで見守る。 「いいのか? やるぞ!」 「「「お、おう……!」」」  ゴクリ───。  イアンの手が、『聖剣』の柄から離れようとして───……。 「ほ、本当にやっていいんだな?!」 「「「いいからさっさとやれ、この馬鹿!」」」  ───誰が馬鹿じゃぁぁぁああああ!!  と、4人でコントをやっていたその一瞬のうちに───……。 「お、聖剣が倒れ始め───」  キュババババババアァァァアアアア!!   キュバババババババッバババアアン!!  ズッドォォォォォォオオオオオオオオオオオオン!! 「うぉわ~!!」 「またですかーーーーーーーー!?」 「きゃーーーーーーー! スカートがぁぁ!」 「誰も見ねぇから安心しろぉぉおお!」「ンんだと、ゴラ! 見ろやボケ!」  突如上空より降り注いだ無数の光の雨がイアン達の周囲にも降り注ぐ!!  その爆風たるや、もう、ゴウゴウと!!  誰一人直撃しなかったのは幸いだが、地面が揺れる揺れる!!  おまけに『聖剣』が──────……。 「あ、あーーーーーー! と、飛んでくぅぅぅうう!」 「じーざす!! イアンさん、何やってんですか、キャッチしてください!」 「ちょっとぉぉおお! あれ無くしたら何しに来たのかわかんないわよ?!」  大慌てで聖剣を追いかけるグルジアとエミリー。 「おいおい! キャッチしちゃダメだろ? で、どっちむいてるんだ? 着地した瞬間か?! それとも、止まった瞬間?!」    だから、どっちでもいい!  バラムは完全に趣旨を理解していないのは丸わかりだ。 「やばいやばい! なくしたら大変だぞ───……追え! 探せ!!」  自分で手放しておきながらイアンは血走った眼で聖剣の行方を追う……。  そりゃそうだろう。  もし紛失したならば? ギルドになんといって報告するつもりだろうか。  まさか、棒倒しをしていたらどこかに飛んで行っちゃいました、って?? 「言えるわけねーだろ! ばか!!」 「「馬鹿はアンタでしょ!」」  血眼になって土砂をひっくり返すイアン達。  結局頭上から降り注いできた土砂に覆われ、聖剣は一時行方不明になってしまったが、その後無事に回収……。  しかし、まったくいいことがないまま、今日もイアン達の一日は過ぎ去ろうとしていた。
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