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第13話「往還機」
ぷしゅー……!
「こ、今度は何だよ!!」
濛々と立ち込める煙。
周囲には焼けた匂いが立ち込め、レッサーガルムどもは溶けていた。
そして、残りのガルムどもは、その音と熱がよほど恐ろしかったのだろう。
キャインキャイン! と遠吠えを残してしばらくその気配が遠ざかっていくのだった。
「た、助かった……けど! くっそー……今日は次から次に色々起こるな、もう!!」
もうもうとした煙が晴れた頃───。
カールの目前に現れたもの。
「な、なん、だこれ……?」
カールの目の前には白い巨大な鳥のようなものが翼を横たえるようにして鎮座していた。
「と、鳥……? いや、機械……?」
生物特有の空気が感じられない。
それ以前に、敵意といったものが全く感じられなかったのだ。
──ってことは……。
そっと近づいてみるカールであったが、
「やっぱり、機械だ、これ。だけど、一体何の素材で───」
不思議な触感のツルンとした手触り。
さらに調査しようとしたその時、
ウィィイイイイン! ぷしゅー!!
「ひょぉ?!」
突如、背後? らしき場所から壁がせり出し、ゴゴゴゴと、カールめがけて倒れてくる。
「ちょちょちょ!!」
慌てて脇ののけると、その壁が地面につく。
すると、壁の内側が階段状に段々になっており昇降通路となった。
……どうやらステップを兼ねているようだった。
(……って、す、ステップ??)
「これ──────乗り物なのか?!」
驚くカールであったが、確かにステップが開いた先には、優に数人はいれそうな空間がある。
埃っぽい臭いが溢れるその先。
薄っすらと明かりが灯り、中にカールを誘っているようだ。
「は、入れって意味か?」
カールが恐る恐る中を覗き込むと、パパパッ! と床に明かりが灯り先へと導こうとする。
火でも、魔法でもなさそうな不思議な光だ。
「……わかったよ」
恐る恐る足を踏み出すと、床の明かりがオレンジから緑にパッと変化する。
「お……」
それが斬新かつ面白かったので、カールは少し緊張を解いて、内部へと進んでいった。
中は、思ったよりも広く、
通路のような場所を通れば4つほどの扉が左右に並んだ部屋。
それにしても足音一つ響かない不思議な床だ。
相当な硬度があるらしい、軋み音すらしない。
そのまま、床の明かりに従って進むと、行き止まりにたどり着く。
「なんだ、ここ??」
そこにはツルンとした椅子が一つと、その前にも椅子が二つ。
椅子には、白い甲冑が安置され────……。
「ひぃ!」
思わず飛び跳ねるカール。
その視線の先にあったのは、ほとんどミイラ化した死体だ。
「う、うわわわ! こ、これ、骸骨がうごかしてたのかよ!!」
ガタタン! と大きな音を立てて転んでしまうカール。
その途端、室内が低くうなり始める。
「や、やば! わ、罠か?!」
ポーン♪
『ようこそ、往還機へ。当機は貴ユーザの利用を歓迎します』
優しげな女性の声とともに、地面が淡く輝き、生えるようにして色白の人影が現れた。
「ひ、ひい!! ご、ゴースト?!」
アンデット系ダンジョンに生息するという、人語を話すアンデット……リッチの類いかもしれない!
「く──……! これでも、くらえ!!」
カールは残りの回復薬を取り出し人影にかけようとしたが、その瞬間──……。
チュン!!
壁が輝いて赤い光線を放つ。
『当機内では、スタッフへの危害行動は禁止されております。以後、注意ください』
ニコリ
男か女かもわからない中性的で病的なまでの美しい顔の人物がそういって笑った。
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