7人が本棚に入れています
本棚に追加
第9話「拡散荷電粒子砲」
「ぎゃぁぁぁああああああああ!! 来るな来るな来るな!!」
大慌てで走り出すカール。
幸いにも地図は手元にある。
フィールド型ダンジョンなので、夜空に輝くの星の位置からも方角判定可能。
なんだけど……。
「方角とか言ってる場合じゃね~~~~!!」
ズシンズシンズシン!!
『『『グルァァァァァァアアアアア!』』』
「ちょ、ちょっと数が多くない? これ?」
ザっと見ただけど10体以上のオーガが迫ってくる。
どいつもこいつも上級のオーガだ!
「ひぃぃぃぃいいいいい!!」
レベルアップのおかげで回復したとはいえ、カールは所詮Cランク程度の冒険者。
SSランクのダンジョンで、A級以上のモンスターに追われてタダで住むはずがない!
「やばいやばいやばい!! しかも、どんどん入口から遠ざかっていく──────あー!!」
食欲全開でオーガの亜種が追ってきた。
体格差からもとても逃げ切れるもんじゃない!
「くっそーーーーーー! せっかく、助かったと思ったのに……! もーーーーーー!」
誰でもいいから、
「助けてくれぇぇぇえええええ!!」
みっともなく、大声で鳴き叫ぶカール。
他力本願もいいところだが、
彼には───……お星様がついていた!!
『了解──────救助要請受諾、再チャージ開始』
…………は?
『これより、支援砲撃を開始します──────要救助者のルート上に確認された未確認巨大生物の排除開始』
「……ちょ?! え? あ、あれ? アンタ、さっきの人か───」
危機一髪のところで、カールを助けてくれた恩人…………なんだけど。
皆まで聞かずにそいつは一方的に話し出した。
『荷電粒子砲:拡散──射撃用意、発射まで5、4、3……』
ちょ……?
え──────?
……か、荷電粒子砲……の『拡散』ッ?!
拡散ってあんた?!
『───2、1……──発射』
ぜ、絶対やばい奴でしょ、これ?!
……おぉぉいい?!
「ファイアじゃねーーーーー!! それ、絶対ファイヤじゃないよね?! 誰か知らないけど、まさか、また───」
……あの時、空が光ったキュバァァァンってやつを──────。
『着弾まで、0.5秒───弾着
「ちょ、ま」
『…………今ッ!!』』
キュバババババババッババババアアァァァアアアア!!
『『『グルァァァ───
ズドォォォォォオオオオオオオオオオオオオン!!
「どぅぁああああああああああああああああ!!」
思った通り空が光ったかと思えば無数の光の雨が降り注ぎ、それぞれが地面に激突して大爆発!!
いや、地面じゃない……! 地面ごと、オーガどもを全て薙ぎ払ってしまった。
キュババババババアァァァアアアア!!
キュバババババババッバババアアン!!
それどころか、悪鬼の牙城の城塞そのものにも、無数の光の雨が降り注ぎ穴だらけにしてしまった。
内部からは猛烈な爆発が起こり、城塞がゴウゴウと燃えている。
「ふぉぉぉ………………」
爆風に吹っ飛ばされ、ゴロゴロと転がったカールは、生まれたての小鹿ようにプルプルと起き上がる。
「ひ、ひぃぃ…………生きてるぅ……のか? これ? 俺、生きてる?」
ブルブル震えたカールが恐る恐るあたりを見回すと、シュウシュウと湯気を立てる小さな穴が無数に開いている。
穴の傍には、何やら炭化した塊が。
「な、なんだよ、これ?? なんなんだよ!?」
※ 鑑定 ※
魔物:オーガナイト
備考:炭化死体。
素材の回収はほぼ不可能
※ ※ ※
シュウ、シュウ……! ×16
※ 鑑定 ※
魔物:オーガビショップ
備考:炭化死体。
素材の回収は絶望的
※ ※ ※
ブシュゥゥ……! ×23
※ 鑑定 ※
魔物:オーガジェネラル
備考:炭化死体。
素材の回収とか無理
※ ※ ※
ジュゥゥゥウ……!! ×5
や、
「…………やり過ぎでしょ!!??」
見渡す限りで20体はくだらない、原型すらない炭化死体。
それ以上に、視界の範囲外にもあるのだろう。
……あたり一面に漂う、焦げた肉の焼ける匂い……。
つぎの瞬間。
※ ※ ※
カール・オルドビスのレベルが上昇しました
カール・オルドビスのレベルが上昇しました
カール・オルドビスのレベルが上昇しました
カール・オルドビスのレベルが上昇しました
カール・オルドビスのレベルが上昇しました
※ ※ ※
おいおいおい……!
「うぉぉぉおおい?! またか? またなの?! 俺、倒してねーっつってんじゃん!!」
カールのツッコミなど知らぬとばかりに、今度はドロップアイテム。
素材回収は無理でも、倒した後に出現するアイテムは回収できるらしい──────って、
ポィン♪
ポィン♪ ポィン♪ ポィン♪ ポィン♪ ポィン♪ ポィン♪
ポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポィン♪
……炭化死体から零れ落ちる大量のドロップアイテム。
この日、この瞬間、カールはまたまたレベルが上昇し、一気にLv14も増えたとか増えなかったとか……。
最初のコメントを投稿しよう!